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    第9回 塩原紗綾さん
    (音楽療法士、心理療法士)

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フルート奏者として東京芸術大学を卒業後、音楽療法士の道に目覚め、現在はオットー・ワーグナー病院第一精神科、心理療法・心身症センターで、欝や人格障害、心身症などを患っている患者と関わっている塩原さん。人間と真正面から向き合う仕事について、その緊張をほぐす香りとの時間について。あまり知られていない尊いお話をうかがうことができました。

「音楽療法」という言葉にひかれて

フルート奏者だった塩原さんは、東京芸術大学に通う傍ら、18歳の頃からドイツ語の専門学校「ゲーテ・インスティテュート」にも通っていたという勤勉な人。音楽療法に興味を持ち出したのは、そのドイツ語学校の掲示板に見つけた求人でした。

「オーストリアで音楽療法を学んだという方が、人を募集していたのです。私は音楽療法を学べるのかと思って電話をしてみたら、音楽療法の対象となるクライアントを探していたのでした。それで電話を切ったのですが、もう一度かけてみたら『東京芸術大学の人なら、話をしてみたい。音楽療法について知りたいなら、施設に来て見学してもいいです。ただし、対象者の方を知っていただくために、そして、対象者にもあなたを知る機会があるように、午前中から来ていただくのが条件です』と言われました。」

実際にそこで塩原さんが見た「音楽療法」とは、障害児の方とその方のもっている能力を支えたり広げたりするために音楽を用いるというものでした。

「それは大変興味深いものでした。その施設の方に『ぜひフルートを吹いてください』と頼まれ、クリスマス会に伺ったことが、私のその後の将来を決める大きなきっかけになったように思います。」

向き合うエネルギーの強さに感動して

その施設のクリスマス会は、塩原さんの想像を超えたものでした。

「体育館のようなところで、小学生くらいまでの、心と体の障害をそれぞれにもつ子どもたちが座ったり寝ていたりしていました。そのなかで、ひとり、高学年の男の子が壁の前でウォークマンのようなものを顔に近づけて、前後に激しく揺れていました。自閉症の男子でした。」

塩原さんとピアニストの友人は、アニメの曲やジブリの曲など、子どもたちが喜びそうな曲を演奏しました。

「灯りが落ち、最後にディズニーの『星に願いを』を演奏したときのことでした。フルートの音と、空間がぴたりと合ったような、凝縮した空気感を感じたのです。いろんな大きなホールでの演奏経験はありましたが、聴いている人たちがこんなにこちらを向いてくれているというエネルギーを感じたことはありませんでした。」

そのとき、信じられない事が起こりました。

「ひとりだけ壁を向いてウォークマンを聴いていたあの男の子が、演奏が終わるやいなや、真っ先に私に駆け寄って、拍手してくれたんです。その後はまた、自分の世界に戻っていってしまいましたが。」

その経験が、塩原さんに大きな志と純粋な欲求を与えたのです。

「音楽とお客さんというよりも、こうして音楽によって心地よさが共存する関係は素晴らしいものだと感じました。誰かの心にこうやって響くものを作りたい。音楽を介し、人間と人間として、つながりたい。そういう職業につけたらいいなあと思うようになりました。」

そのとき、塩原さんは大学2年生。翌年から、新たな目標へのチャレンジが始まりました。

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