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今かぐわしき人々 第179回
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    第179回:瀬戸摩純さん(新派俳優)

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新春は『東京物語』の舞台から。
原節子が演じた紀子を山田洋次流で演じたい

 日本の現代演劇の元祖、新派。そこで30年以上、ひたすらに演じ続けてきた瀬戸摩純さん。2024年1月、東京・三越劇場の新春公演で、小津安二郎監督の映画として世界に知られる『東京物語』に出演。映画では原節子さんが演じた平山紀子の役を瀬戸さんが演じます。脚本と演出はあの『男はつらいよ』の寅さんシリーズなどで映画監督として名高い山田洋次さん。大きな演目を前に、コロナ禍を経て再び熱い舞台への想いを語っていただきます。

《1》一瞬一秒を撮る山田監督が、それを舞台で演出すると

 小津安二郎監督の映画『東京物語』は、日本を代表する作品の一つ。世界的にも日本人のメンタリティを象徴する作品として大きく評価されています。
 これが舞台でどう再現されるのか。実は2012年に三越劇場で初演され、2013年7月には京都・南座ほか、全国で上演され、大評判に。そして2024年1月に再演が決まりました。

「2020年に再演が予定されていたのですが、新型コロナウィルス感染症の拡大で中止になってしまいました。けれども上演に向けて稽古を重ねてきていましたし、楽しみにお待ちいただいているお客様も多かったので、今回、再演が決まったんです。12月からお稽古に入ります。山田監督は毎日いらっしゃって、細かい演出をしてくださるんですよ」

 山田監督といえば『男はつらいよ』の寅さんシリーズや、『幸せの黄色いハンカチ』、『学校』シリーズ、『家族はつらいよ』シリーズなど、濃やかな人間味を描くことに長けた人。小津作品を舞台化するにあたって、一挙手一投足の演出をつけられるのだそう。

「山田監督は、すぐ目の前にいらして、指示を出されるんです。近いのです。仕草ひとつひとつを見ていらして、セリフ一語一語を聴いていらっしゃいます。例えば最初の作品の『麦秋』のとき『今の”ただいま”じゃないでしょう。どこへ行ってきて、どんな気持ちで帰ってきたの?』と聞かれる。私は『東京で会社勤めをしているから、鎌倉まで疲れて家に帰ってきました』と言うと『じゃあ、そういうただいまじゃないよね』と。全員、稽古が終わると汗びっしょりになっています」

 確かに小津監督の映画には、独特のゆったりとした間があり、派手な動きではないのに伝わってくる感情があります。それを舞台で表現するのは本当に難しそうです。
 瀬戸さんが山田監督の演出を受けるのは2作品目。最初の作品は2010年の『麦秋』でした。そこでの役が決まったのは、オーディションならぬ、面接。

「写真選考の後、面接で役をいただきました。その面接で印象的だったのは、目を見てくださらないんですよね。こちらをご覧にならない。私が目線を外してどこか別の場所を見ているときに、山田監督の視線を感じましたが」

 山田監督はシャイな方なのと同時に、目の前にいてもその人を俯瞰して見ておられるのでしょう。

「ダメ出しされて、セリフが出なくなっちゃう俳優もいるくらいな、本当にピリッとした、良い意味での緊張感を頂いています。怖気付いていてはダメなんです。疑問があれば聞く。そして一生懸命やっていれば『これができないならコレで』と言う代案をいただけることもありますし、本が変わることもあります。”てにをは”にもこだわられていて『その私が、は私は、にしましょう』と変わることもあります」

 その厳しさは、主役であろうが脇役であろうが同じ。

「意味とか雰囲気で台詞を憶える人もいますよね。でもそういうそれらしい台詞は一切許されません。雰囲気じゃダメなんです。映画を撮るってきっとそういう、一瞬一秒のものなのでしょうね。曲も映画と同じものを使いますし、そういう意味では映画の『東京物語』を愛しておられるお客様のことも裏切らないのではないかと思います」。

瀬戸摩純さん

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