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    第23回:藤原道山さん(尺八奏者、作曲家)

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藤原道山さんの写真2

《2》

ここ数年では、舞台音楽の作曲や音楽監督のような仕事も増えている藤原さん。特に人気漫画を伝統芸能の域に合致させた『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』の音楽を手がけられたのは大きな仕事だったようです。

「1作目はテーマ曲のみだったのですが、2作目は劇中の音楽を100数十曲作りました。また、舞台が変わって再演出されるたびに微調整が必要になってきます。たとえば、ミュージカル俳優の下村青さんが出演するときには『ミュージカルを書いて』と言われました。バトンは出るわ、ミュージカルは出るわ、それに合う曲が必要なので、手の内にないものを作らなくてはいけない。これまで僕はあまり音数の多い曲を作らなかったのですが『もっと派手に』『だめ押しでさらにゴージャスに』と言われましたね。ここまでやってもいいのかなあと思いつつ舞台を見ると、ぴったり来ていました。演出も今できることが全部入っていますしね。そこに参加できて、大きな経験をさせてもらったと思っています」

自分にないと思っていたものを作り出す。ひとつの可能性を突き破って次の可能性へと広げていく藤原さんの芯には、ひとつのモチベーションがあります。

「僕には邦楽を一般の人に一人でも多く伝えていきたいという気持ちがあります。でも、聴きやすいものをただ演奏するのは面白くない。本物をどう伝えるか、どうそこへとナビゲートしていくか。難しいものをなるべくやさしく。やさしいものをさらに深くできればと思うのです。邦楽の楽器も、年配の人たちだけではなく、若い人たちもやるものとして広めていきたい。9月に行われる熊本県芸術文化祭の音楽監督もやらせてもらっていますが、そこでは高校生にも出てもらいます」

《3》

成熟した静溢さと、少年のような純粋さを併せもつ藤原さんは、とても佇まいの美しい人。香りについては、昔から敏感だったそうです。

「なんでも匂いをかいで怒られる子どもでした。食べ物も必ずかぐんですね(笑)。

だから、今はかぐことが当たり前なワインが好きなのかもしれません。ワインの香りが大好きなんです」

生活のなかの香りも「すっきりしていて甘みがある」ものがお好み。

「ほかの香りを圧倒してしまうような強すぎる香りより、ひとつずつの繊細な香りを感じていたい。ふわっとたちのぼるような。お香はけむたいものはあまり好きではないので、煙があまり出ないようなバランスの良いものがいいです」

手土産におもちしたKITOWAの香りは気に入ってもらえた様子。

「ふわっと木の香りがしますね。パッケージのデザインもお洒落ですね」

実際に使われるシチュエーションにも、藤原さんが人と暮らしを大切にされている様子が伝わってきます。

「弟子がきますので、お稽古のときに玄関にお香をたいたりします。あとは、きものを保存するのに、虫除けの香袋を入れています。樟脳は香りが強すぎるので。

時々『おきもの、いい香りがしますね』と言われます」

藤原さんにとって、好ましい香りのあり方は、どんなふうなのでしょう。

「そこはかとなく感じられる、というのが日本的だと思います。香水のように迫ってくるような香りではなくて。なんとなく気づく、気づくか気づかないかというくらいの使い方がいいのではないでしょうか」

プライベートでは最近、書を習い始めたという藤原さん。

「月に一度なのですが、楽しいです。思うように書けないことが楽しい。今までの自分の字のクセというのが、なかなか直らないものです。そして先生に言われることを聞いていると、僕が弟子に言っているのと同じだと気づきました。それ以来、生徒には少しやさしくなったかもしれません(笑)。習うというのはいいことですね。自分を見つめ直すことになるし、初心に戻してもらえます」

初心に戻り、また今のプロフェッショナルな技に新たに得たものを反映する。そんなことができるからこそ、藤原さんはまだまだ柔軟にその世界を広げ、深めながら、進化を遂げていく人なのでしょう。

  1. 2/2

藤原道山プロフィール (ふじわら・どうざん)

初代山本邦山に師事。
東京芸術大学卒業、大学院音楽研究科修了。安宅賞、江戸川区文化功績賞、松尾芸能 賞新人賞を受賞。CD、映像作品等多数リリース。伝統音楽の演奏活動及び研究を 行うと共に、マリンバ奏者SINSKE氏や尺八・チェロ・ピアノとの「KOBUDO-古武道-」 といったユニット活動、さまざまなミュージシャンとの共演を積極 的に行う。映画『武士の一分』にゲスト・ミュージシャンとして参加ほか、『敦』 『マクベス』(野村萬斎演出)、『ろくでなし啄木』(三谷幸喜演出)、スーパー歌 舞伎II(セカンド)『ワンピース』(四代目市川猿之助主演)などの舞台音楽、吉永小百 合氏の朗読アルバム「第二楽章 福島への思い」音楽監修も手がける。 NHK「にほんごであそぼ」にレギュラー出演。中学音楽教科書「中学校の器楽」(教育 芸術社)編集協力及び出演。東京芸術大学講師ほか後進の育成にも力を注ぐ。 現在、都山流尺八楽会大師範。都山流邦山会、日本三曲協会、江戸川邦楽邦舞の会会 員。「曠の会」同人。

藤原道山公式ホームページhttp://www.dozan.jp/


藤原道山×SINSKE 2018年ツアー

5/28(月)東京・浜離宮朝日ホール
5/29(火)東京・浜離宮朝日ホール
5/31(木)北海道・札幌kitaraホール
6/15(金)福岡・電気ビル・みらいホール
6/21(木)愛知・熱田文化小劇場
6/22(金)大阪・ザ・フェニックスホール 他

http://www.dozan-sinske.com/

コンサート会場限定CD第7弾
「花 〜FlowerS〜」
花 〜FlowerS〜の写真
品番:DSCD-0007
価格:2,000円(税込)


撮影したお店

「かまわぬ代官山店」

年間500種類以上の柄の手ぬぐいを発表するという「かまわぬ」。そのデザインと染めの美しさには海外のファンもたくさん。有名ブランドとのコラボレーションも多数。藤原さんもさっそく大人買いされていました。代官山店は古民家の一軒家。ゆったりと選ぶことができます。

https://www.kamawanu.co.jp/shop/daikanyama.html


取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1

撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/


2018.5.18 written by 森綾
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