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今かぐわしき人々 第36回:三遊亭好楽さん(落語家)
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    第36回:三遊亭好楽さん(落語家)

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現在、円楽一門会の会長で、老舗演芸番組『笑点』の大喜利メンバーとしても欠かせない存在である三遊亭好楽さん。師匠が自ら開場した池乃端しのぶ亭にうかがい、弟子入りから23回も破門になったいきさつ、笑点のメンバーや鶴瓶さんとの交流など、小話のように話していただきました。

《1》

三遊亭好楽さんは『笑点』の大喜利では「お金がない」というのをよくネタにしています。しかし、実際は14人も弟子をもち、2013年には上野・池之端に「池之端しのぶ亭」という小屋も構えたのですから、そんなことはないのでしょう(笑)。 千代田線根津駅からほど近いこの小屋は、40〜50人も入れば満員になりますが、 噺家の生の声が聴ける、あったかくて気持ちのよい空間です。

「この間、鶴瓶さんが来てやってくれました。告知は一切していなくて、突然SNSで呼びかけたのに満杯になってしまいました。すごい時代ですね。お正月も、笑点のメンバーが来てくれることになっています。誰とは言わないけどね(笑)」

南隣に稲荷神社があり、もともとは中華料理屋さんがあったというこの土地は、好楽さんがおかみさんとお嬢さんと3人で見に来てすぐに気に入ったのだそう。

「かみさんは、1階を全部どーんと使えばといったのだけれど、私はどうしても楽屋が作りたくてね。楽屋でお客の気配を感じて緊張しながら、今日はどんな感じかな、って思って、舞台へ上がる。そして、緞帳はなくっちゃいけない。それで、この広さになっちゃったんだけどね」

楽屋を見せていただくと、姿見があり、ちょっとした水屋もある本格的な作り。好楽さんの同じ噺家への愛情が伝わります。

「恩返しの年齢になりましたしね。後輩を育てないとと思って、がんばって建てたんですよ」。

《2》

好楽さんは、二人の師匠をもちます。 最初の師匠は林家彦六さん。まだ彦六さんが八代目林家正蔵を名乗っていた頃の落語をラジオで聞いた好楽さんが、自宅に押しかけて4度目に入門を許されたのだそうです。

「僕は本名を家入信夫というのですが、偶然、17歳で亡くなった師匠の息子さんも、のぶお、という名前だったのです。それで師匠のおかみさんが『のぶおが帰って来たんだよ』と言ってくださって。ご縁でしたね」

しかし好楽さん、なんと彦六師匠から23回も破門になっているのです。

「ま、破門は禁煙と同じですよ(笑)。一番大変だったのは、昭和43年の51,000円事件です。当時は前座で100円しかもらえないから本当に貧乏していたのですが、ぱーっと飲みに行ってみんなにごちそうして一晩で使っちゃったんですね、51.000円を。当時のサラリーマンの給料でいえば3ヶ月分くらいじゃないかな。母親に出してくれと言って、いくらだい、51.000円って言ったら、ぎゃおー、という聞いたことのない声を出しました(笑)」

当時はまだ100円札や500円札もあった時代。細かいお札もかきあつめ、師匠が数えてくれて、払いに行ったと言います。

「私は8人兄弟の6番目。父親は警察官で、私が小学校に入る前に40歳くらいで亡くなったんです。おふくろが女手一つで育ててくれました。96歳で亡くなりましたが。可愛がってもらいました。私は本当にやんちゃで、小さいときからみんなにごちそうするのが大好きだったんですよ(笑)」

ところが最近、師匠の息子さんとのもう一つの共通点もそこにあったことがわかりました。

「師匠の息子もやんちゃだったらしいんです。ずいぶん、師匠は謝りに行ったりもしたらしい。その息子さんはちょうど17歳で亡くなっていて、私は19歳で師匠のところへ行ってますから、本当にかぶるものがあったのでしょうね。『おまえは破門だ!』と言われるたびに、私も自然に涙が出るのです。すると、おかみさんが『許してあげてくださいよ』と言ってくださってね。それでしばらくすると許してもらって。その繰り返しでした。どこかで、こいつはやめさせられないという気持ちをもっていてくださったんでしょうね」。

まるで江戸時代の落語のような、情のある話です。

三遊亭好楽さん

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