ゴディバやレスポートサックなど、さまざまなブランドが注目するアーティスト、GAKU。
しかし彼は3歳のとき、自閉症と診断され、後に重度の知的障害と多動症であることもわかりました。そんな息子が常人を超えた表現に行き着くことを支えてきたのが、父親である佐藤典雅さんです。GAKUさんが言葉以上に伝える力をもつ絵に目覚めるまで。そこには周りごと変えていった佐藤さんの軌跡がありました。
2024年1月。東京・二子玉川RISEのスタジオ&ホールという440㎡の空間に、120点の絵が溢れんばかりに並びました。
力のある筆致、ビビッドな色、時にはキュートに、時にはモダニズムに。それは一人のアーティストの個展だったのです。120枚の絵を見終わった後、なんだか元気をもらったように思ったのは、筆者だけではなかったでしょう。
それが、GAKUの絵でした。
「あれがGAKUくんですよ」と、スタッフに教えてもらいましたが、矢のように走り去ってしまいました。
GAKUをプロデュースしているのは、父親の佐藤典雅さん。
個展開催が終わった翌日、お話を聴くことができました。
「一人のアーティストの作品であの場所をいっぱいにするのは初めてだったようです。おおよそ4000人の方が来場してくださいました。最初の個展は2019年。キャンセルが出て幸運にも開催できた世田谷区民ギャラリーの40㎡の場所ででしたから、10倍ぐらいのところでできたことになりますね」
16歳で絵を描き始めて6年目。その短期間になんと700枚もの絵があるのだそう。
「絵を描き始めて9ヶ月で最初の画集を出しました。その後、TSUTAYAやパルコで展示をし、ダイアナ、ザボディショップ、ゴディバ、レスポートサックと多くのブランドとのコラボレーションも果たしています。ここ1年では、香港でのインスタレーションも実現しました。でも都心で440㎡という場所での個展は、かなりの多くの人の認知につながったのではないかと思います。GAKUは美大に行っていたとしたらまだ4年生という年齢ですからね。特にこの1年の成長は、すごいなあと思います。障害者というゲタを履かせる必要はない。作品の力で勝負していますから」
作品をどう見せるか、知ってもらうか。佐藤さんは障害者ストーリーにありがちな「美談も涙も不要」と笑います。