向谷実、櫻井哲夫、神保彰。名打ての3人のミュージシャンが29年ぶりに顔を合わせるのは”大人げないオトナの音楽”を標榜する、かつしかトリオ。80〜90年代、一大フュージョンブームを巻き起こしたバンドの一つ、カシオペアのメンバーだった彼らが、今と未来に向けて新たに組むユニットは、音楽の楽しさと更なる輝きにあふれています。結成のいきさつ、10月25日に発売されるフルアルバム『M.R.I_ミライ』についてなど、賑やかに語っていただきました。
キーボードの向谷実、ベースの櫻井哲夫、ドラムスの神保彰。
もともと、人気フュージョンバンドの一員として知っている人も多いかもしれませんが、今やそれぞれの楽器の世界でも第一人者となっている彼ら。そもそもの出会いはどんなふうだったのでしょう。
櫻井さんが落ち着いた口調で語ってくれました。
「1973年頃、もともと僕とギターの野呂一生さんが16歳くらいから知り合いで、神保君ではない別のドラマーと一緒にやっていたんです。それで、キーボードが欲しいということになって、1976年に、野呂さんが向谷さんを誘った。カシオペアはそこから2枚目までやって、新しいドラマーを迎えることになりました」(櫻井)
初めてメンバーで神保さんの演奏を見に行ったのは1979年。東京・渋谷の109のオープニング・アクトを慶應大学ライトミュージックソサエティが演奏し、そのバンドマスターが神保さんだったのです。
「当時、櫻井さんはもうカシオペアでデビューしていたので『櫻井さん、プロだし、手伝ってもらえませんか』とお願いして。櫻井さんが来てくれるし、曲は『ロッキーのテーマ』とか、コンテンポラリーもやって、ビッグバンドジャズという雰囲気ではなく演奏した記憶がありますね」(神保)
向谷さんはその日、初めて聴いた神保さんのドラム演奏の印象をこう語ります。
「新しくお迎えするドラムの方はどんな方かな、と。渋谷109の前に特設ステージが組まれていて、ハチ公前に向かって演奏しているんで、ぐしゃぐしゃに人が集まっていて。神保くんはビッグバンドを率いて堂々と叩いていた。テクニックも存在感もすごいドラマーだなあとびっくりしましたね」(向谷)
3人が加わったカシオペアの人気は爆発的なものに。日本だけではなく、世界ツアーも組まれ、多いときで年間140公演あったという公演を10年間、続けたのでした。
やがて1990年に櫻井さんがカシオペアを脱退。その後、向谷さん、神保さんも脱退しましたが、周年記念イベントやそれぞれのユニットに呼び合い、付かず離れずの距離感を保ってきました。
「3人でがっつり組むのは29年ぶりなんですけれど、懐かしいというのはなかったですね。まあもともと、20代を共にした音楽の家族みたいな感じだから」(向谷)
「僕のデビュー40周年ライブをブルーノート東京でやった時に、向谷さんにも出てもらったし。喋りが長くて店の人がハラハラしていましたが。僕の後ろに時計を置かれちゃった」(櫻井)
「ステージのふたりのしゃべりは、楽しくてコントみたいになっちゃうんですよ(笑)」(向谷)