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今かぐわしき人々 第174回
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    第174回:桂雀々さん(落語家)

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ひとりぼっちで嗅いだよその家のカレーの香り。
孤独だったからこそ、落語にめぐりあえた

 ラジオ、テレビと関西を中心に活躍してきた落語家・桂雀々さんは、2011年、芸歴35周年を機に東京に本拠地を移しました。師匠の2代目枝雀譲りの温もりと間合いで、着々と全国にファンを増やしつつあります。今年3月23日から8月23日までは東京23区全てで独演会を開催する『TOKYO23区行脚ツアー 桂雀々独演会 雀々ぼっち』を敢行。少年時代の艱難辛苦を乗り越え、落語に巡りあえた喜びと、今の落語への想いを語ってくださいました。

《1》12歳でひとりぼっちに。でも近所の人たちが助けてくれた

 メディアでも高座でも、人懐っこい笑顔と巧みな間合いで見ている人を笑いに引き込んでいく桂雀々さん。しかし、2010年に文庫本化された桂雀々さんの『必死のパッチ』(幻冬舎文庫)を読むと、少年期の壮絶な体験が描かれています。
 小6のとき、母親が蒸発。ギャンブルにハマった父親は息子と心中未遂を図ろうとし。… 雀々さんは近所の人たちに助けられながら、中学時代を一人で暮らしました。

「父親のギャンブルによる家庭崩壊ですね。母親はなんとか体裁を繕って、自分で働いて頑張ってたんやけれど、僕が小6の時に、もう限界やったんでしょうね。ドロップアウトしてしまった。父も闇金に借金していて、やっていたうどん屋もできなくなって、結局僕を置いて出て行ってしまった。その後、父親は寮のあるタクシー会社に勤めるようになり『1週間に1回、生活費を持ってきたる』と言っていましたが、1000円の時もあれば3000円の時もある、っていう程度で。僕の顔も見ないで帰っていく。ガスを止められ、電気を止められ。僕は家の前にあったパン屋のおばさんのところと、6軒向こうの民生委員の家で洗濯、晩ごはんなどの世話をしてもらっていました」

 まさに江戸時代の落語にあったような、近所の人たちの人情。それがなかったら、雀々さんは今この世にいなかったかもしれません。

「人の情に救われました。両親よりもあかの他人に施しを受けて。民生委員のご夫婦はつい最近、他界されてしまいました。僕の本がドラマ化されて見てもらうのが夢やったんですが。見せたかったです」

 一人取り残された少年時代の雀々さんは、1週間に1度やってくる借金取りの親分に、身の上を語って5000円もらえたというようなエピソードも。語りの天分は、そんなことからも育まれていったのでしょうか。
 食べていくために皿洗いをして晩ごはんをもらったり、瓶を集めてお金に替えたり。

「ひとりぼっちで寂しくて、でもそれを誰にも言えなくて。一人で、寂しさという恐怖と戦いながら、何かちょっとでも笑いにしようとしていたところもありました。笑わないと生きていけない、という状況だったんですね」

 時代は素人出演番組全盛の昭和。15歳になった雀々少年は、テレビに出ては賞金稼ぎを始めます。

「大阪にもいろいろ素人番組がありましたが、高知でたまたまネットしていた東京の番組『ぎんざNOW』を見て、これに出たいと。手紙を送っても却下されるだろうと思い、テレビ局に電話したんです。『漫談で出たいんです。なんとか出してもらえませんでしょか』って。たまたま出てくれたディレクターが『君の大阪弁のしゃべり、電話で聞いてるだけでも面白いね。自腹で来れますか』と、出してもらえることになりました。5週勝ち抜くとレギュラーになれるんですが、4週目、5週目は交通費を出してもらえましたね」

 『ぎんざNOW』でやったネタは、当時レギュラーだったずうとるびをいじったものがウケたそう。

「何十年も経って、卓球愛好者の会で山田隆夫さんにお会いしたら『えーっ、あのときの君か。噺家になったの!』と驚いておられました」。

桂雀々さん

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