Instagramのフォロワー数は10万人以上。アクセサリーやアパレルとのコラボレーションのほか、エッセイやポッドキャストもと「好きなこと、思っていること」を発信することがそのまま仕事にもつながっている、小谷実由さん。名だたるファッション誌で美しいものをまとってきた記憶がその背景に息づいているのでしょう。若い女性たちの憧れの「おみゆさん」の今を語ってもらいました。
櫛、便箋,チューリップ。…なんとなく好きで集まってしまうものをInstagramに訥々とアップしている小谷実由さん。その写真を見続けていると、彼女の世界がふわふわとその輪郭を広げていき、見ているこちらもほっこりした気持ちになります。添えられた文章も、彼女独自の想定外な言葉の組み合わせが。
「Instagramは始めて10年ぐらいですかね。日頃、思っていることを書いています。一人っ子なので、一人で空想していることが多かったからかもしれません」
考え事をして言葉に書き始めたのは10代のころから。
「中学生のころから日記を書き始めました。私は記録屋、なんだと思います。頭のなかにあるものをファイリングしてまとめておきたいんです。Instagramも、誰かに見せたいというよりは、好きなもの、景色を自分が見てみたかったんです。だから、それを見て楽しんでくれる人がいることには驚きました」
見ている人たちは小谷さんから新しい「ものの楽しみかた」を教えてもらっているような気持ちになるのでしょう。
好きなものを集めたいという気持ちは、ものだけではなく、景色、空間までも。
「好きなもの収集癖があるんですね。景色、花、建物とか、そういうものを見た好きの瞬間を覚えておきたい」
綴る言葉は2年前の夏に『隙間時間』(ループ舎)というエッセイ集になりました。
「隙間時間をどう過ごすか、というエッセイを書いてくださいという連載の依頼をもらって、1年書いてみました。でもそこでわかったのは、隙間時間が苦手だということで。その後も日常を綴ることは続けて、3年間書きためたものを一冊にしました。20代の終わりから30代が始まるくらいの3年間だったので、変化があるだろうと踏んでいたし、振り返れば変化はありました。20代の総集編みたいな本かもしれませんね」
『隙間時間』はページをめくるごとに、くすりと微笑んだり、じんわりしたり、隙間という言葉に似合わない無限の空間が広がっているような一冊です。