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    第4話 『未知の事情』

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【ここまでのあらすじ】

暗闇でご飯を食べるイベントで偶然知り合った女性誌編集長の鍵崎多美子(50代)、フラワーアーティストの内畠麻貴(40代)、レストランカフェでパティシエをする野添有紗(30代)、旅行代理店勤務の殿村未知(20代)。
世代が違いながらもなぜか通じ合うところを感じた4人は、有紗がパートナーの勝瀬とともに経営する池尻のビストロで女子会をする。
有紗とオーナーの勝瀬の恋。麻貴と年下のピアニストとの恋。…デザートが運ばれた時点で多美子は酔いつぶれていた。


《1》

「タミーさん、起きてください。デザート、テイクアウトにしましたから」

 有紗がとんとん、と優しくその肩を叩くと、多美子はムクッと起き上がった。
半目であたりを5秒ほど見回し「ごめんなさい」とつぶやいて、両手で髪をかきあげた。

「んく~。はー。おはよう」

 その無防備さに3人は大笑いした。麻貴が落ち着いた表情で話しかける。

「大丈夫ですか。そろそろ帰ろうかなという感じなんですけど」

「うん。ほんとごめんなさい。ちょっと寝たら酔いが覚めるのよ。もう覚めちゃった。これを『タミーの10分寝落ち』と呼ぶ」

 酔っ払いが大丈夫と言ったらやばい。が、どうやら多美子は本当に少し寝れば 酔いが覚めるタイプらしかった。その証拠に起き上がるとまた仕切り始めた。

「ええと、みんな、どこに住んでるんだっけ。終電とか大丈夫?」

 麻貴は東急目黒線の武蔵小山、未知は世田谷線の上町に住んでいるという。

「多美子さんはどこに住んでるんですか」

「私はサンチャとシモキタの間くらいのところ。タクるから未知さん、三軒茶屋の駅で落としてあげるよ」

「あ、ありがとうございます」

 未知はスマホのサイドを押して時間をチラッと見ながら答えた。

「有紗さん、ありがとう。とっても美味しかったわ。それにすごくサービスしてもらって。いいのかな」

 多美子が言うと、有紗は少しだけ飲んだワインで紅くなった頰に笑を浮かべた。

「いえ、こちらこそ、素敵な集まりにしてもらってよかったです。なんていうか… 日頃、接点がないどうしで、いろいろ話せるっていいですね」

 麻貴はちょっと心配げだ。

「いや、どこで誰がつながっているかわからないから、ここでした話は、内緒にしましょうね」

 多美子はもちろん、と首を縦に振った。

「あ、でもタミーさんと未知さんの話はまだですよね」

「私は何も…」

 未知は口ごもり、多美子は言った。

「私の話をし始めたら、3日くらいかかるからね」

「あ、そうか」

 無表情な顔で、未知は納得したように頷いた。

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