1. HOME
  2. 連載長編小説『4 LOVE NOTES』
  3. 第23話 『有紗のクリスマス』
4 LOVE NOTES
    1. 特集
  • 連載長編小説『4 LOVE NOTES』
    第23話 『有紗のクリスマス』

    1. LINEで送る

《1》

 ローズマリーとガーリックが焼ける香りがローストチキンから立ち上る。
 クリスマスイブを挟んだ3日間は、ビストロ・ドゥ・ミニヨンが1年で一番忙しい時期だ。おまけにそれが終わると、おせちの仕込みも始まる。
 有紗はまだ乳飲み子の海と莉奈を連日シッターさんに預けなくてはならなかった。それでも洋三と千裕と3人では追いつかないほどやるべきことがある。洋三は神戸から、調理師学校を出て5年になる甥の翔太も呼び寄せた。卒業してからは大阪の和食の店に5年いたが、そこを辞めて次は海外のレストランを目指したいという。その前に少しフレンチかイタリアンで働こうとしていた。
 翔太はカーネル・サンダーズを短髪にして小柄にしたような体型で、黒縁のメガネをかけていた。中学のときはラグビーをやっていたといい、なかなか動きは軽かった。体育会系で育ったからか、和食の店で鍛えられたからか、礼儀正しく、なかなか気の利くところもあった。

 オマール海老のサラダ仕立て、オレンジソース。ビーツのポタージュ。そしてクリスマスといえば、ローストチキン。この店のローストチキンは、たくさんのきのこや栗を詰めてある。その部分も美味しいと評判になった。

 クリスマスイブには未知が、そして翌日のクリスマスには多美子がそれぞれ2名で予約を入れていた。
今日はイブだ。
 有紗は朝からパタパタと動きながらも、基本のベシャメル・ソースを仕込んでいる洋三に語りかけているのか、独り言なのか、こうつぶやいた。

「今日の未知ちゃんは希望さんと来るよね。それで、多美子さんはあの鷲士さんんとかいう人の来るのかな」

「その、ITの会社の男か。付き合うとんか」

 洋三も何気につぶやいた。有紗はきのこのゴミをとったりむしったりしながら答える。

「わからん。一緒に会社をやり始めたからというて、そうとは限らんけど」

 ふうん、と、洋三は小さなため息をついて言った。

「そこに愛はあるのか」

 有紗はふふふ、と笑うと、聞き耳を立てている翔太と千裕に指示した。

「翔太くんはビーツの皮を向いてピューレにしてね。千裕ちゃんは、ケーキのほう、早いとこね」

 二人はあわてて持ち場についた。

  1. 1/4

先週の人気記事

スペシャルムービー

最新記事

  • 長編小説第24話

    更新日:2019年12月16日

  • バックグラウンド・インタビュー 第18回 株式会社菊屋 宮崎浩彰社長

    更新日:2019年12月11日

  • スペシャル・インタビュー 第62回 鏡リュウジさん

    更新日:2019年12月9日

  • バックグラウンド・インタビュー 第17回 株式会社スリーキューブ

    更新日:2019年12月6日

  • スペシャル・インタビュー 第61回 浜村淳さん

    更新日:2019年12月1日

  • 長編小説第23話

    更新日:2019年11月29日

  • 心身ともにリラックス!アロマキャンドルクラフト

    更新日:2019年11月22日

  • スペシャル・インタビュー 第60回 式町水晶さん

    更新日:2019年11月20日

  • 温まりたいときには ― ジンジャー・パチュリ

    更新日:2019年10月31日

  • スペシャル・インタビュー 第59回 大西順子さん

    更新日:2019年10月30日

  •  もうすぐ「アロマの日」!

    更新日:2019年10月24日

  • スペシャル・インタビュー 第58回 倉田健次さん

    更新日:2019年10月16日

  • スペシャル・インタビュー 第57回 三遊亭小遊三さん

    更新日:2019年10月9日

  • 長編小説第22話

    更新日:2019年10月7日

  • 落ち込んでいるとき ― ティーツリー・ゼラニウム

    更新日:2019年10月3日

  • 長編小説第21話

    更新日:2019年10月01日