世界に広がる「香」の文化。商品開発部課長の米脇さんは、主に海外向けの商品を開発しています。様々な国の人たちがどんな香を好み、そこにどんな日本を見ているのか。そこには日本という国に求められるイメージがありそうです。
「私が携わった商品は海外向けのものが多いので、すぐ出荷されてしまって、社内でも見たことがない人が多いんですよ」
米脇さんはそう言ってちょっと苦笑しながらも、手元にある海外向け商品を持ってきてくれました。世界で一番売れているというお香「Morning Star」です。
「主にアメリカで売られている商品ですが、フローラル、シトラス、ウッディ…様々な香りが17種類もあるんです」
多種多民族が混在する国だからこそ、好まれる香りの種類も多種多様なのかもしれません。国によって、好まれる香りは違うようです。
「中国では香木系の香りが圧倒的に好まれます。白檀、沈香が中心ですね。また、フランスでも香木系の香りは好まれる傾向にあります。「禅」などの日本の歴史に魅力を感じるのでしょう。こちらから「これが日本風」と押し付けるのではなく、それぞれの国が感じる日本のイメージを香りによって提供してあげるということが大事になってきます」。
海外向け商品には、一流ブランドとのコラボレーションも含まれます。 イヴ・サンローラン、ランコム、キャシャレル、クロムハーツなど。
「そのブランドの世界観がお香という形で表現されるので、お互いに納得しあうまでに深いコミュニケーションが必要になります。その際、もっとも意見交換が必要になるのが『お香そのものの香りと、焚いたとき、さらに焚いた後の香りのイメージを先方のご要望に合わせる』ということです。主に焚いた後に漂うイメージを楽しんでもらうことを説明しますね。興味深かったのは、日本では煙の少ないお線香が人気がありますが、お香から煙が出る事を気にされないブランドが多いという事です」
最近発売された商品では、コーヒーの香りの線香があります。
「直営店の方より、お客様の中で『生前、その人はコーヒーが好きだった。だからコーヒーの香りに一緒に包まれたい』とおっしゃった方がいたというお話を聞いて開発したのが『ささら備長炭 コーヒー』というお線香です。もちろん『毎日香』『青雲』といった我が社の代表的、伝統的なお線香の香りを好んでくださる方も多いのですが、 部屋で焚くとなると現代的な洋室にふさわしいものを望まれる方も増えているのです」
焚くことで、そこに暮らす人が心地よくなるのも大切な要素。お線香の香りも進化しているのです。
「お線香にもいろんな香りがあることを知っていただけるとうれしいです。自分にとって心地よい香りを選べば、お供えする時間ももっといい時間になりますし」