日本香堂には全国にいくつかの工場がありますが、都心にも大きな工場があります。ここでは1日に3000~4000箱の線香や高級なお香が、職人たちの手で丹念に作られています。ほとんどが手作業というその匠の技を、蛯澤達夫工場長につぶさに見せていただきました。
線香作りはまず、タブの木の粉など10種類程度の原料を練りあわせるところから始まります。原料の粉は緑色の大きな機械で細かくふるいにかけられますが、高級なものは手でふるいます。工場に一歩踏み入れると、もういい匂いが漂っています。振るわれて超微粒子になった原料は、70~80%の水を混ぜて練ります。
「冬の乾燥時期と、梅雨のような湿度の高い時期では水の量が変わってきます。どのくらいの量が適量かは、職人の手の感覚なんですよ」
と、蛯澤工場長。工場長が練りの職人さんに「あとどのくらいかな」と声をかけると、若い職人さんから「あと1リットルで10分ですね!」と元気な答えが返ってきました。
若い職人さんに見えましたが、入社して28年とのこと。新入社員はまず配属されないそうです。
頃合いよく練られた原料は、数人で瞬時にビニール袋に詰めます。練るために使った機械は、違う種類のお香を作るとき、香りが移らないようにするため、手で水洗いするそうです。
練り上げられた原料は「巣金」と呼ばれる型に入れられ、油圧で押し出されます。まるでパスタのように出てくるお線香。でも、実際に押し出されたものを板で受け止めてみると、ずっしりと重みがあります。いい香りの成分がずっしり詰まっているのです。
「柔らかいうちにカットし、ここでまっすぐにきれいにできたものだけが選別されます。お香の場合は長いまま乾燥させてカットされます。ここでも職人さんが目と手で良品、不良品を仕分けていきます」。
オイルを垂らして香りを楽しむ形香(香菓かぐのみ)は、職人さんのこだわりの見える木型。よく見ると千鳥の顔など、少し違うかも。それも手作りのなせる技です。
コーンタイプは太い型を使用し、上から押し出して切っていき、円柱の型に入れます。