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    稲葉洋一さん 冬美さん(名古屋市・株式会社ぶつだん稲葉代表取締役夫妻)

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 仏壇職人として修行した創業者は仏壇製作の会社を設立。以来60年以上、仏壇の製造・販売を行ってきた稲葉仏壇店。近年では、名古屋城「金シャチ横丁」にある原寸大の金の鯱鉾もこちらの職人たちの手になるものだとか。ネット販売でも楽天で部門別の1位になるなど、先進的です。弔いの文化を伝えることにも熱心な稲葉社長ご夫婦を名古屋市南区に訪ねました。

まるで城のような豪華な門構えの名古屋市南区にある稲葉仏壇店

《1》仏間からリビングルームへ。形は変われど仏壇はあり続ける

 まるで城のような豪華な門構え。名古屋市南区にある稲葉仏壇店は、まずその表玄関に圧倒されます。
 店内に一歩踏み入れると、なんとも広々とした空間。宗派に応じた昔ながらの美しい仏壇から、現代風のシンプルな家具調のものまで、さまざまな仏壇が博物館のように並んでいます。
 2階にはさらに驚きの光景が。
 なんと金の鯱鉾の2分の1のレプリカが。
 稲葉洋一社長と奥様の冬美さんに、隣に立っていただきました。

「名古屋城『金シャチ横丁』にあるレプリカの金箔貼りは、うちの職人が手がけたものなんですよ」

 想像した以上の金のまばゆさに、名古屋のゴージャス志向な文化が凝縮されています。この2階には、2000万円近い大きな仏壇も。この仏壇、観音開きの扉が重すぎて、左右に扉を開けたとき用の箪笥が置かれていました。

「もともと、名古屋は仏壇も大きな立派なものが好まれていました。でも、近年、戒名も不要、墓じまい、仏壇じまいなどという言葉が出てきまして。名古屋はそんな風にはならないだろう、10年はかかるだろうと思っていましたが、あっという間に日本中に広まりましたね。最近はリビングルームに仏壇を置かれる方も多いので、小さめのものを置きたいという方が増えました」

 そこで生まれてきた言葉が「手元供養」。

「暮らしている側でご先祖様を供養したいという気持ちは消えていません。だから、お線香もリビングルームでたけるような、良い香りのものが求められています。ミニ寸のものなど、まだ1割にしか満たないですが、そのサイズがあると分かれば、まだまだ増えていくでしょう。白檀や沈香だけではなく、故人が好きだったコーヒーやお茶、花のかおりなどを求める方も増えてきています。特にお母様が亡くなられた場合、お母様が好きだった香りをとおっしゃる方は多いですね」。

広々とした空間の店内

《2》ネット販売を先駆けて大成功。お香の進物ももはや定番に

 時代とともに変わっていく弔いの表現。仏具の購入方法も、ネット販売が増えてきました。先見の明があった奥様の冬美さんは、15年も前からネット販売に力を入れてきました。

「ネット販売のサイトづくりは、一からひとりで始めました。写真の撮り方を教えてくれる講座で習って、いろいろと背景を工夫したりしながら、商品のページを作りました。最初は1週間に1〜2個、お線香が売れるかどうかで…」

 冬美さんがそうおっしゃると、社長は「だからキャンセルが出たと言って泣いてたな」とポツリ。そんなご苦労は遠い昔で、今はたくさんの注文がやってきます。

「特にご進物のお線香の注文は増えました。『喪中はがきが届いたら、お線香を贈りましょう』というCM、新盆見舞いなど、お線香を贈答する習慣が根付いたのです。コロナ禍では葬式もできず、弔問もできない状況でした。受け取る側も、手持ちを望まなかったですから。弔いの心を表現するのに、お送りすることがぴったりだったのですね。直接、店ではなく差出人にご本人様の名前を書くことができるようになったのも大きいです」

 贈り贈られることの安心感は、長年、地元で信頼されてきた稲葉仏壇店というブランドも後押ししてのことでしょう。

「ネットのお客様はとてもシビアなので、包装の仕方なども丁寧に手をかけています。進物はパッケージがとても重要ですね」

 包装している様子を動画で紹介したりといったアイデアも冬美さんのものなのです。

名古屋市南区にある稲葉仏壇店

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