お線香の香りのバリエーションが広がるにつけ、冬美さんは「お香」を日常に提案したいと考え始めています。
「年配の方がお電話で注文してくださるときも『良い香りのものをお願いします』とおっしゃるんです。『どんな香りが良いですかね』と尋ねると『お任せします』と。それで、予算を伺い、選びます。好みは人それぞれで『白檀が入っているものを』という方がいらっしゃれば『ちゃんと煙が出るものにしてください』という方もいます。そのあたりはご希望を伺いつつ、きめ細かい対応をしています」
しかし、香の種類の呼び名だけではわからないことも。
「若い方は白檀と言っても通じず『サンダルウッド』と言えば通じた、ということもあります。年齢に関わらず、白檀が好きな方は多いですね」
ネットで購入するお客様からも、香りについての質問がやってきます。
「この商品とこの商品は何が違うのですか、と言った質問が来ます。どんな香りがいいのか、悩まれる方も多いです。そのときは『ご自身のお好きな香りを贈られるといいと思いますよ』とお伝えします」
まさに冬美さんは、香りのコンシェルジュとしての役割もされているのです。
「お香というのは、弔いの気持ちの表現だけではなく、日常を豊かに楽しむものとして、もっともっと可能性があると思うんです。ネットだけではなかなか伝わらないこともありますが、言葉で伝わるよう、勉強していきたいです。一方で、インターネットができない人にも、お香の楽しみとつながっていただけないか、考えているところなんです」
待つビジネスから、提案するビジネスへ。稲葉仏壇店は、これからの仏具店の新たなスタイルを切り拓いていかれることでしょう。
弔う心の表現は終わることがありません。そして暮らしの中にお香がもたらす心の豊かさは、ますます大切になっていくはずです。
●稲葉仏壇店
〒457-0015
愛知県名古屋市南区岩戸町19-19
TEL:052-823-4211 FAX:052-824-6066
営業時間:9:00~18:00
●和み仏壇 INABA(オンラインショップ)
https://www.rakuten.ne.jp/gold/inaba-b/
取材・文 森 綾
https://moriaya.jp/
大阪府生まれ。神戸女学院大学卒業。
スポニチ大阪文化部記者、FM802編成部を経てライターに。92年以来、音楽誌、女性誌、新聞、ウエブなど幅広く著述、著名人のべ2000人以上のインタビュー歴をもつ。
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撮影 上平庸文
https://www.uwadairaphoto.com/