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その11「甘栗とレントゲンとヘレンケラー」
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  • その11「甘栗とレントゲンとヘレンケラー」

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●微熱が下がらない

 小学校に入った私は、気合ばかり強くて、身体がついていかないようなところがあった。

 2学期には学級委員に選ばれた。2学期は一番長く、学芸会や運動会など行事も多い。1年1組には障害をもった児童も二人いて、その子達のフォローも、学級委員の仕事のひとつであったから、気もつかった。

 それで3学期は疲れが出たのか、風邪をひいて気管支炎になった。父方の祖母は結核もちであった。だから私がコンコン咳をし、微熱が下がらない状態が続くと、すぐその病を疑われた。
 こども病院へ連れていかれ、点滴を小型にしたような太い注射を打たれた。帰り道、どこかのおばさんが母に「あの病院はやめたほうがいい。ミスで死んじゃった子がいるらしい」という噂を流した。母は驚き、その病院には二度と連れていかなかった。
 代わりに、三浦小児科という森小路にある小さな町医者に連れていった。そこは40代くらいの美人の賢そうな女医さんで、設備は古いがよく診てくれるという噂だった。
 清潔だが古い建物だった。待合室には茶色い革張りの長椅子があり、投薬の窓口は、木枠で縞のガラス戸だった。

「森さん、どうぞ」

 診察室では、白衣を着た先生が革の背もたれのある椅子に座っていた。カルテのそばに万年筆とインクの壺があった。

「血沈を調べて、一度、レントゲンを撮ってみましょう」

 レントゲン室は診察室の隣の、さらに使われていないらしい古びた佇まいだった。先生はがたごとと、レントゲンの前に板を載せ、私にそこに載るようにと言った。おそるおそる足を載せると、がたがたしていて、なんだか不安だった。母親がさらに不安げな顔をしていた。
 胸を当てるところは冷たかった。

「はい、吸って。そのまま止めて」
 がっちゃん、という感じで撮影は終わった。

 数日後、その画像が目の前にあった。なんとなく白く曇っていた。

「ちょっと白いのと、血沈の数値がよくないのが気になりますが、まあ、抗生物質を飲んで様子をみましょう。子ども用の薬ですが、抗生物質は時間は守って飲んでください」

 血沈の数値が、と言われて母親は落ち込んでいた。私も怖かった。下の弟が生まれて半年ほどだったので、私は祖父母の家で寝ることになった。

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