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その13「仲良くなった人が遠くへ行ってしまうのはなんでだろう」
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  • その13「仲良くなった人が遠くへ行ってしまうのはなんでだろう」

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●緑組の男前トップ3

 幼稚園の年長組といえば、6歳になる5歳児である。
 私の通っていた帝国学園附属幼稚園は、あか、もも、きいろ、むらさき、あお、みどりと、色で組み分けされていた。寒色系は年長組であった。
 年少時は黄組さんで、年長時は緑組さんになった。
 45人のクラスの中で、おませな女の子たちは「誰がかっこいい」とか「誰の恋人になりたい」と言ったことを言い始めた。
 私は自分からはそんなことは言わなかった。おそらく、周囲に親戚の叔父叔母がたくさんいて、大人に囲まれて育ったことで「そういうことは大人になって決めればいい」と思っていた節がある。
 しかし、友達の影響というのはすごいもので「誰がかっこいいと思う?」と問われれば、そういう目でマジマジと男子を見るようになるものである。
 トップ3は、Yくん、Oくん、そしてもう一人。しかし私はそのもう一人を記憶していない。よほどタイプではなかったのだろう。
 わらわらと5〜6人の5歳女子が頭をくっつけるようにして話していた。

「森さんは誰がかっこいいと思う?」

「Yくんかな」

 私は卒直に言った。Yくんはクラスで一番背が高くて運動神経が良かった。色白で目も髪も茶系で、欧米人のような綺麗な顔をしていた。

 ところが、みんなの評判は違った。

「えーーーっ。絶対Oくんがかっこいい」
「私もそう思う」
「私も」

 なんとそこにいる私以外の全員がOくん推しだったのである。

 それをきっかけに、私はOくんの顔をちゃんと見るようになった。
 確かに。Oくんは私とほぼ同じ背丈であったが、よく見ると可愛い顔をしていた。坊ちゃん刈りの目は黒目がちで、笑うとえくぼができた。みんなが言うには、Oくんはとても優しいのだと言う。
 なんで気づかなかったんだろう、と私は思った。
 気がつき始めると、仲良くなるチャンスがたくさんあった。背丈が近いから、並ぶと手を繋ぐ場所にいたりした。生活発表会の劇『みつばちマーヤの冒険』で、私は前後半4人ずついるマーヤの前半に入ることができたが、マーヤが蜘蛛の巣に引っかかった時、助けてくれるカブトムシの役の一人にOくんがいた。

 蜘蛛役の男の子に手をもたれて「助けて、助けて」と言うと、カブトムシのOくんがブーンと走ってきて、空手チョップのように蜘蛛の手と私の手を切り離してくれるのだった。

 その瞬間、私はこの人をボーイフレンドにしようと決めた。

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