田原俊彦さん、近藤真彦さんらとともに「たのきんトリオ」と呼ばれたアイドル時代を卒業後、独学でギタリストとしての道を極め、現在も多くの名うてのプロミュージシャンたちから一目置かれる存在となった野村義男さん。技術の探究への静かな情熱とともに、デビュー当時と変わらない気取りのない「よっちゃん」の笑顔がそこにありました。
野村義男さんがギターと出合ったのは、小学5年生のとき。ある日、●歳年上のお姉様が、いとこから借りてきたアコースティック・ギターを弾いていました。
「僕がプラモデルを作ってる隣の部屋で、じゃんじゃか弾いててさ。なんだろう、って。よし、おねえちゃんが知らない間に、僕が弾けるようになってやろう、って思ったんです。で、姉が部活へ行ってる間に内緒で弾き始めました。最初は風、かぐや姫あたりの曲。どちらかというと、一人で陰に入ってる感じね。表に向かってさあ友達と手を繋ごうよ、っていう人はアリスの曲へ行くよね。だから僕が最初に弾いたコードはEm。Emから始まった。だから今でもEmは好きですよ」
フォークから派生したポップスがニューミュージックなどと呼ばれた時代。しかし、野村さんの興味はアコースティックギターからエレキギターへ移っていくことに。
「テレビを見てたらCharが『逆光線』を弾きながら歌っていたの。それで、ギターソロの時に手元がアップになった。するとCharの指がギターの右下にある丸いのを触った。あれ、なんだ!?
音のボリュームが上がった。僕のギターには、あれ、ついてないよ、と思ったんです」
後日、学校へ行くと、またCharの姿が。それは、野村さんが好きだった女の子の下敷きのなかの写真でした。当時はクリアな下敷きに好きなタレントの切り抜きを挟むのが大流行していたのです。
「エレキギターを持っている、そのCharの写真にノックアウトですよ。それでもう、エレキが欲しいと思いました。中2だったかな。思い立ったら、カタログ少年です(笑)。自転車で行ける場所まで行って、安いのから高いのまでカタログを集めて。実家のある中野から秋葉原、お茶の水あたりまで行きましたよ。そこで迷ったのは、まずギターを買うか、アンプを買うかですよね。アンプが先だと練習ができないか、なんて悩んで。そして1978年5月に、とうとう初めてのエレキギターを手に入れたわけ!」
そこからはギターと向き合う日々が本格的に始まりました。
「どうやって弾いたらいいかわからなかった。情報も何もないから、勝手に弾くしかない。
今のように教室とかもないし、アーティスト寄りなコードブックしかないし。だからずっと独学ですよ。一切、師匠っていないんです」。