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今かぐわしき人々 第107回
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    第107回:服部百音さん(ヴァイオリニスト)

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 音楽という海は、素晴らしいアーティストとお会いするごとにまたその深遠さを増していきます。今回お会いした服部百音さんは、幼少時代から海外で演奏を続けるうら若きヴァイオリニスト。その静かな物腰と黒い瞳の奥には類まれな遺伝子と情熱が見え隠れします。

《1》本番は綺麗なドレスを着ていても戦場

 服部百音さんの父上は作曲家の服部隆之氏。ということは、祖父は克久氏、曽祖父は良一氏と三代続く作曲家の家に生まれたことになります。
 しかし最初に彼女が興味をもったのはバレエでした。

「3歳の時からクラシックバレエをやっていたのですが、身体が硬く、外反母趾もあって、トゥシューズを履いて真剣にやれるのかどうか、という迷いが出てきました。ピアノも始めましたが、母がヴァイオリンを弾いていたので、おもちゃのヴァイオリンを弾くのはとても好きでした。ただ、いざヴァイオリンを習おうとすると、ソファから飛び降りて骨折したり、怪我をするのです。それで今じゃないのかなあなんて先延ばしていたのですが、5歳から始めました。家で教わることができたのはよかったと思います」

 とはいえ、そこからわずか3年ほどで、百音さんはオーケストラ初共演を果たします。

「ヴァイオリニストを目指したわけではなく、物心がつく前に選んでしまっていたのですね。期せずしてそうなってしまった。物心がついた時は演奏会をしている自分がいました。本当の良さがわかったのは19歳頃でしょうか。最近のことなのです」

 もう一度人生があったら、バレリーナになりたかったと微笑みます。

「今もバレエは好きです。そもそも音楽が好きで、音楽に乗って踊ることが好きだったのでしょう。ただ身長が152とか153で止まってしまっているので、今思えばバレエを目指さなくてよかったですね」

 8歳で弟子入りしたのは、ロシアの巨匠、ザハール・ブロン氏。

「回遊魚のように世界の彼方此方で演奏活動をされている先生なので、先生がいらっしゃる場所へ習いに行くというパターンで、10年くらいお世話になりました。1箇所へ留学する方も多いので、変わったバターンかもしれませんね」

 プロの楽器奏者になるには長時間の練習を重ねるとよく聴きますが、百音さんも然り。しかも日本の演奏会と並行して海外へもレッスンに出かけるのは大変な労力だったことでしょう。

「練習は演奏の質を高めるためのものですが、精神も安定します。本番は何が起こるか分かりませんから、練習が自分のなかの保険になるのです。舞台では綺麗なドレスを着ていますが、戦場です。」

 長年、ヴァイオリンを押し付けた首元にはその跡が残っています。しかし彼女の話を聴いていると、それも彼女を形作る大事な一部分と感じられます。

服部百音さん

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