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    第107回:服部百音さん(ヴァイオリニスト)

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《2》コロナ禍で深まった家族の団結、聴衆との濃い繋がり

 高名な作曲家一族に育った百音さん。しかし演奏家であることと、作曲家は全くジャンルが違うと言います。

「演奏と作曲は使っている回路が別物ですね。何もないところから曲を作るのは全く別の才能だと感じます。稀に奏者もオーケストラとの共演で、コンツェルトの第一と第二の間にカデンツォと言ってオリジナルやもともとある曲のアレンジを要求されることがあります。自作で弾くこともあり、私も一度だけやりました。家では絶対に父には聴かせられず、本番の時に聴かせただけです。自分の曲はどこかで聴いたことのある曲の切れ端を集めたようで…、演奏も作曲もできる人は尊敬しますね」

 謙遜して俯く百音さんですが、そこにファミリーへのリスペクトが滲んでいます。

服部百音さん

「母はヴァイオリンの専門なので具体的な感想を言ってくれます。父や祖父は客観的にオーディエンスとして、初めてその曲を聴いての印象などを率直に話してくれるのがありがたいです。初めてと言っても、私の練習をダイニングなどで漏れ聞いているとは思いますが」

 世界的に活躍するファミリーの家は、シェアハウスのような趣があるそうです。

「父は家にこもって曲を書いて、スタジオへ行って朝まで帰って来ないとか。私は海外にいるとか。コロナ禍で、ようやく3人で過ごす時間ができました。父が新しくできた曲を私に『ちょっと聴いてくれない?』といってくれたり。ただ、祖父の容体が思わしくなかったので、家族の心の団結も必要でした」

 コロナ禍のなか、ようやくできた演奏会では、新たな演奏家としての感情も湧いてきたと言います。

「奏者は大量のエネルギーを放出するのですが、それをまた大きな拍手でフィードバックしてもらった。コンサートは一方通行ではないので、コロナになってから、より一層濃いものを受け渡ししている気がします。人間が単純に生きているだけでは音楽は不要なものとカテゴライズされがちですが、本当にそうでしょうか。クラシック音楽は生きることの原点を根本的に問いただすものだと感じました。例えば戦争の時代においても、作曲家が死と背中合わせにつくった素晴らしい曲が残っています。それを再現するのは、本当にやりがいのある仕事です」

 一般的には難解と言われるそんな曲の数々をこそ、百音さんは掬い上げたいと考えています。

「映画と同じで、一度観ただけでは理解できないものもあるし、笑えるくらい面白いものもあるし、涙を流せるものもある。普通に生活していても、明るい、優しいだけではない、さまざまな感情が湧きますよね。クラシック音楽にはそういうものが全てあると思います。日本でスポットライトの当たっていない曲を耳馴染みの良い曲にしていきたい。聴衆がつまらない曲だと感じてしまうのは、奏者の責任なのです」

 クラシック音楽を演奏するという使命を帯びてきらきらと輝いた瞳が、こちらを見据えていました。

服部百音さん

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