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今かぐわしき人々 第112回
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    第112回:大江千里さん(ジャズピアニスト)

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 ニューヨークへ渡って14年目。アメリカでジャズピアニストとして活動の幅を広げる大江千里さんは、パンデミックの中、全ての楽器をPCの音楽ソフトの音源を使って1人で打ち込んで作ったニューアルバム『Letter to N.Y.』を7月にリリースしました。そして8月28日は配信ライブ『納涼JAZZ千里天国』も開催。激動の時代に生きることと音楽が一体になっている大江さんに、新しい作品たちと配信イベントを開催する思いを伺いました。

《1》パンデミックのブルックリンで生まれた「ひとりジャズ」

 今回のインタビューはZOOMを使ってのリモート形式。大江さんのいらっしゃるニューヨークは夜8時。日本は朝の9時。
 画面の大江さんはお元気そうでしたが、去年パンデミックとなったニューヨークは日本からは想像できないほどに厳しい状況でした。

「病院に遺体安置の冷蔵庫車が横づけされ、ひっきりなしに救急車が走っているそんな状況でした。命が明日あるのかわからない今日を手探りでステイホームする。ロックダウンの頃、僕が住んでいるブルックリンのエリアは、幾つかの人種が交差する場所で一時コロナの罹患率が70%でしたから。緊張感があったです。ユダヤの厳しい戒律のコミュニテイではマスクをしないので見事にクラスターが起こりました。買い出しに外へ出ると、FDNYと書かれた何台かの救急車のそばで『ああ、間に合わなかった』と、十字を切る救急隊員に何度か出くわしました。病院以外でも命を落とす人が多かった。窓からふと外を見ると、僕の家の前に気が触れて彷徨う男が毎日立っいる。去年の今頃はみんないつ自分が死んでもおかしくないという不安と出口のない焦燥感と闘っていました。毎日が同じように繰り返される。でもそれは全く違う日の連続であることに気づき始め、なるだけ同じ時間に起床してしっかり一つ一つを丁寧にやるようになってきました。そうなると食事は特に毎回が最後の晩餐の気分でした。食材が尽きてくると、なかなか買いにも行きづらい状況だったし、なるだけあるもので耐えて工夫して、少しでも元気になれるメニューを作って自分を鼓舞してました。この世に生き残ったのが自分一人だけなのでは?と思うような日々でした。」

 そんななかで、大江さんが音楽を手放すことはありませんでした。2020年10月には、マット・クロージー、アリ・ホニックとともに、ブルーノートNYから世界へ有料配信ライブを実現させたのです。

「ブルーノートNYから3人で演奏することができて改めてこのトリオでしか出せない音を確認できて興奮しました。その直後は、よーし、次のアルバムをもし作れるのならこのトリオでとことんまで突き詰めたゴリゴリのストイックジャズをやるぞ、と思っていました」

 しかし年初に「そろそろアルバムを作り始めたい」と言う思いを伝えるミーティングしたソニー・ミュージックダイレクトのプロデューサーが、こんな提案したのでした。

「千里さんがいつもマットやアリに渡すために、デモ録音をコンピューターで打ち込んで作って、”1人ジャズ”を送ってくるでしょう。あれを会社で大きな音で聴いていたら、後ろで何気に仕事をしていた若手の社員が、これ、ニューヨークの新しいジャズアーティストですか、カッコイイっすね!って聞いてきたんです。だから、これは千里さんだよと答えると、『えええ?てっきりNYの若手のジャズの人かと思った。』って驚いたんですよ。これ、もしかしたら誰もやってない、面白いジャズのアプローチじゃないかなって。千里さん、どう思いますか?」

大江千里さん

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