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今かぐわしき人々 第122回
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    第122回:川崎晶平さん(刀鍛冶)

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 1999年、文化庁から作刀承認を受けるや、新作刀展覧会初出品で優秀賞・新人賞を受賞。2003年には埼玉県美里町に晶平鍛刀道場を設立して独立。数々の賞をとり、今や名工と認められている川崎晶平さん。世襲ではなく、全く知らない世界に飛び込んだ彼が積み重ねてきたものとは。

《1》衝撃を受けた国宝「城和泉守正宗」

 無骨な鉄の塊が、一刃の涼やかで美しい刃物になる。その過程には、大変な労力があるのだろうとは想像しますが、実際はその想像をはるかに超える時間と労力がかかっています。
 目の前でふいごに風を送り、熱い熱い炎を焚いて、鉄を真っ赤に焼き、カツン、カツン、と槌を振り下ろす。それをまず見ることが、川崎晶平さんと出会うことでした。

 川崎さんは、公務員の両親を持つ家庭から、刀鍛冶に弟子入りしたという経歴を持ちます。刀と出会ったのは、学生時代、東京国立博物館でのこと。

「私はもともと大分の出身で、両親の生家のある臼杵には刀や甲冑が残っていたこともあり、そういうものが好きではありました。でも学生時代に東博で国宝の「城和泉守正宗」をみて、衝撃を受けたのです。その品の良さ、美しさ、鉄の生き生きしていて、しかもしっとりした風情。こういうものを作れたら、と思いました」

 しかし、川崎さんは刀を作るには弟子入りが必要だとわかっていました。一旦は大阪の化学メーカーの東京支社に就職。その後、地方の支社へ転勤を命じられましたが「サラリーマンなら東京にいたい」と思い、退社。今度こそ刀鍛冶になろうと、アルバイトをしながらツテを探し始めました。

「いくつか紹介してもらいましたがピンと来ず、あるとき友人が長野の東急デパートで刀の展覧会をやると誘ってくれたのです。それが「人間国宝 故宮入行平一門展でした。一門の高弟たちの作品が30振ほど並ぶなか、たまたま会場当番に来ていた師匠、宮入恵(当時の名)に出会いました。師匠は出品していた作家の中で一番若く、30代半ばだったと思います。一門には無監査の刀匠もいましたが、僕は出来上がっている人の作品より、宮入さんの刀が一番かっこいいと思えたんです」

 一も二もなく、弟子にしてください、と直談判した川崎さん。けれども宮入さんの返事は「俺は若いし、弟子なんて取りたくない」と剣もほろろ。

「最初にお会いしたのが10月。そこから半年ほど、手紙を書いたり、遊びに行ったりしました。それで、やっとのことで、先代の頃の弟子部屋があるので『自分でなんとか住めるようにするなら来たらいい』と言ってもらえ、4月に入門しました」

 内弟子になったものの、衣食住を師匠の家族とともにし、ゴミ捨て、草刈り、子どもの風呂入れなど、日々の仕事をしながら雑事もこなす日々。

「大学時代はアーチェリー部で、先輩の理不尽にも慣れていましたが、休みも給料も自由もないですから、大変でしたね」

 川崎さんの父親が挨拶に来て、やっと本物の弟子になれるという日。なんと川崎さんは破門になってしまったのです。

川崎晶平さん

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