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    第122回:川崎晶平さん(刀鍛冶)

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《2》昔と今の端境で職人を生きる

 破門の理由はまさかの一言でした。

「父親が来るならと、師匠が『散髪に行ってこい』とお金をくれたのです。でも僕はその時『キムタクみたいに伸ばします』と言っちゃったんですよ」

 師匠はその時は何も言わなかったものの、ご両親がやってきて「息子をよろしく」と挨拶すると「こいつを連れて帰ってくれ」と、ひと言。

「私は人生で初めて土下座をしました。でも許してもらえず、一旦、大分に帰りました。でもちょっとラッキーとも思ったんですよ、休みがなかったから。休んでから、これからどうするか、考えようと」

 久しぶりに大分に帰った川崎さんは、当時付き合っていた女性から電話でこう言われます。

「『25にもなって、このまま辞めたらダメになるよ。ここで辞めたら人間のクズだよ』と。それで、師匠に手紙を書きました。そうしたら、子どもたちが『おにいちゃんと遊びたいと言ってるから、帰って来てもいいぞ』と。それで、2週間後に戻ったのです」

 再び、テレビもだめ、新聞もだめ、真っ白になって修行に専念する時期が戻ってきます。当初の彼女には結局、全く会えないので振られてしまったそうですが、数年後に出会った彼女はこっそり携帯電話を持たせてくれたそう。

「仕事を覚えるのは難しくはないですが、独立して作家として生きていけるかは別問題です。例えばお金の遣いかた一つをとっても、中学、高校を出てずっと内弟子でいたらわからないでしょう。刀が売れたところで、生活費、工賃、材料費がいくらかかるのか。お客様と付き合うときに、どう信頼関係を築くのか。トラブルがあったとき、どうするのか。ある程度社会経験が必要ですよね」

 世の中は大きく変わりつつあります。職人が良いものさえ作っていればよかった、という時代から、それをどう世の中に伝え、責任をとっていくか。全てを職人が1人で担わなければならない時代になってきたのです。

「私が境界線かもしれません。仕事さえできれば良い、という時代から、誰がどんな姿勢で作っているかが問われる時代になってきました。
でも良い師匠につけたおかげで、初出品から『宮入の一番弟子か。それなら未来を買ってやる』と、毎年刀を買ってくれるお客様もいたのです」
 川崎さんの刀はポーラント駐日大使にも認められていたり、『エヴァンゲリヲンと日本刀』という展覧会は2014年にスペインでも展示。その際、講演も行われました。

川崎晶平さん

川崎晶平さん

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