1981年に『センチメンタル・ジャーニー』でデビュー。当時、史上最年少で日本武道館公演を成功させ、トップアイドルとして活躍してきた松本伊代さん。最近ではご主人のヒロミさんとともに”理想の夫婦”としても注目されています。そんな彼女が、デビュー40周年を記念したアルバム『トレジャー・ヴォイス』を年末にリリースしました。このアルバムは、全曲が2020年10月に亡くなった作曲家・筒美京平さんの楽曲。未発表曲も収録され、話題になっています。
スカウトがきっかけでデビューが決まった松本伊代さんは、当時まだ中学生。華奢なスタイルに大きな瞳の可愛らしい少女は、デビュー曲から大人気になりました。ルックスとは裏腹にどこか大人びて甘い感じもある低音の声は、今聴いても印象的で唯一無二です。
「自分の声は好きではなかったけれど、アイドル歌手にはなりたいと思っていました。子どもの頃からキャンディーズ、ピンク・レディー、石野真子さんたちの歌をうたっては振り付けを真似して踊っていましたからね。歌って踊って、と言うのが好きだったんですね」
デビュー曲『センチメンタル・ジャーニー』を提供した筒美京平さんは、ご自身の文章で伊代さんの声を平山三紀さん、郷ひろみさんの声をとともに「私の好きな三大ヴォイスのひとつ」と書かれていたほど。
「でもお忙しい方でしたから、筒美先生とお会いしたのは数えるほどです。声や雰囲気、物腰が柔らかく、紳士的な方だった記憶がありますね。怒ったりすることもなく、子どもの私にも優しい先生でした」
その後も伊代さんに名曲を提供し続けてくれた筒美さん。今回のアルバムは、その自身の楽曲以外に、郷ひろみさんがうたった『あなたがいたから僕がいた』、平山三紀さんがうたった『真夏の出来事』なども伊代さんがうたっています。
アルバムの話が進んだのは、昨年4月に東京国際フォーラムで行われた「ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界inコンサート」に参加したことが大きかったようです。綺羅星のごとく歌手の皆さんが筒美さんを偲んで集まったこのコンサートは、大きな話題になり、参加した人たち同士の交流も深まったのです。
アルバムの1曲目となった『くれないホテル』という曲を伊代さんが聴いたのもこのコンサートでのこと。
「西田佐知子さんが素敵にうたわれてヒットした名曲なのですが、 そのコンサートでは、お客さんがお帰りになる時のBGMとして使われていたのです。すごくいい曲で、なんだか泣けるな、と思って、ぜひ歌いたいと相談しました」
そのコンサートで名アレンジャー、船山基紀さんとも再会。
「船山先生とは1987年のアルバム『風のように』でお願いして以来だったので、本当に嬉しくて。
未発表曲で新曲の『イエスタディ・ワンス・モア』のアレンジもお願いできました」
出来上がったアルバムの10曲は、どの曲も達人たちの仕事が織りなした本物の輝きに満ちています。それを時を重ねて大人になった伊代さんのさらに艶っぽく深みも増した声で聴くことができるのです。