NHK『きょうの料理』や『あさイチ』の「みんな!ごはんだよ〜」のコーナーにもたびたび出演している、料理家の井澤由美子さん。「レモン塩」や「乳酸キャベツ」といった応用の効く保存食の考案者でもあります。中医学の勉強にも余念がなく、365日、一つの食材を取り上げて心と体への働きかけを書いた『まいにち食薬養生帖』(リトルモア)を出版されたばかり。いつも元気で明るい井澤さんの日々の食が伺えます。
井澤由美子さんと初めて出会ったのは、ある調理道具ブランドのパーティーでした。すでに『こんなに使えるレモン塩レシピブック』をベストセラーにされていたので、お名前は知っていましたが、気さくで知識を惜しまず披露してくださる姿勢に感服しました。
「レモン塩を見つけたのは『きょうの料理』のアナウンサー、後藤繁榮さんが最初。うちに(キッチンを拝見)という企画の収録でいらっしゃったことがあり、瓶に入った塩漬けのレモンを見て『これはなんですか』と棚を見上げておっしゃったんです。それで、それを使ってレモンクリームパスタを作ったのかな」
その後レモン塩は『あさイチ』で紹介され、大ブレイクすることに。
「すごく朝早く、『あさイチ』のプロデューサーさんから電話がかかってきて。台本を確認していらっしゃったようで『レモン塩ですか、塩レモンですか』と聞かれました。私は寝ぼけ眼で『レモン塩でいいです』って言っちゃったんですけど。その後、私は6冊のレモン塩本を作りました。同じもので『塩レモン』として作っている人や企業がワーっと増えましたね。モロッコが由来の塩漬けもあるようで、私の勝手な塩分量とは違います」
「レモン塩」は主に調味料として応用の効く素晴らしいアイデア。
「塩分が多い物は時間が経つと茶色くなりますが、熟成が進んで梅干しのような味わいになります。塩分量が少なければ皮は黄色いまま、好みの加減で楽しめます。レモン皮にはダイエット効果もあり、塩蔵してもビタミンCは壊れづらいのです」
煮物はもちろん、スープに炒め物、デザートに至るまでさまざまな料理のアクセントにもなり、旨味も足し、そして皮に多い栄養素がメタボ予防や美肌効果が上がるなどといいことづくめのレモン塩。
塩遊びの一つだった発酵食の面白さを追求し始めた井澤さんが、その次に考えたのが「乳酸キャベツ」。
「すごく素敵なベテランの女性編集者さんと出会って、この人と仕事がしたいと思ったんです。その頃、娘もまだ学生で、でも彼女たちも作ることができる手に入りやすい野菜で何か考えようと。それで、キャベツを思いつきました。密封袋にキャベツと塩と少しのきび糖を入れて重しをして漬け、発酵させたものを作るのです。ローリエやクミン、山椒の塩漬けなど好きな香辛料を入れてもいい。いわばザワークラフトですが、いろんな料理のバリエーションができます」
井澤さんは「塩」は悪者ではないと言い切ります。
「塩分を控えましょう、なんて、塩はいつも悪者みたいに言われますが、塩も使いよう。私は自然塩での塩遊びが大好きです。日持ちもするし、発酵も引き出してくれる。上手に使って、家庭の料理を味わい深く、健康的なものにしてもらいたいですね」。