先頃発売された井澤さんの著書『まいにち食薬養生帖』には「365日の食が心とからだの薬になる」というサブタイトルがついています。
「薬膳、というと、苦さまずさを想像してしまう人もいます。だから私は今は『食養生』という言葉が好きです。例えば子どもの頃に、私たちは麦茶を飲んだり西瓜を食べたりするとトイレに行きたくなると知った。そういう食材一つ一つの力が中医学を学んで、よくわかるようになりました。私の最初の頃の料理が『簡単なのにおしゃれ』というキャッチフレーズで表されるとしたら、これからは日本は老人が増えますし『体に良い』が必要なんじゃないかと。それで7年前からブログに書いていたことを、再度しっかり中国人の中医師の先生や栄養士、農大教授、醸造家、農家の方々にも読んでもらい、正しい情報を吟味して、作ったのがこの本なんです」
時間をかけて、じっくりつくられたこの本は、効率よく体に摂取できる栄養学からの食べ合わせを、中医学に基づいた体の不調を調整する食材が、その摂りかたとともにわかりやすく書かれています。
「気が滞ってイライラしやすい気滞、元気が不足して疲れやすい気虚、といった状態になりやすいんです。そして春は五臓の中で『肝』に負担がかかりやすい時期です。肝機能を補うアサリ、しじみ、レバー、ターメリックや、気の巡りをよくする香りの良い食材の三つ葉、しそ、柑橘類、いちご、山椒や、ふきのとう、よもぎなど。菜の花やたけのこ、たらの芽、うどといった旬の野菜は、デトックス効果も高くお勧めです」
旬の食材は、その時の人間の体の不調を調整する役割を担っているからありがたいことです。
「中医学でいう五臓の肝はストレスが溜まると傷つきます。春は寒暖の差や人間関係の変化など、意外とストレスが多い季節なんですね。夏は心、梅雨時は脾(胃)、秋は肺、冬は腎です。春は香りの良いものをとるといいので、ぜひしっかり嗅覚で香りも嗅ぎつつ、召し上がるといいですよ。肝は目とも繋がっていて、怒ると目が赤くなるのはそのせいです。そういう鬱憤が溜まっている時はグレープフルーツがお勧め。肝をケアする食べ物を取り、血を補うレバーを食べて、お酒は少し控えめに。なるべく肝をいたわってあげましょう」。
年齢よりも20歳は若く見える井澤さんの進言、ぜひ聞いておきたいものです。