歌声や存在が、まさに香りのような人がいます。デビュー30周年を迎える古内東子さんはまさにそんな人。恋愛の普遍的な葛藤を歌い続ける彼女に、変わった自分、変わらない自分について語っていただきました。
デビュー当時から比べると、髪を少し短くした古内東子さん。母親になり、より健やかなコケティッシュさが加わった感じがします。
今回、インタビューをお願いしようと思ったきっかけは、時々「ずっと大好き」という熱狂的なファンに出会うことから。それも皆、ちょっと知的な男性なのです。
「嬉しいですね。そういえば、デビューした頃は女性のファンが多かったんです。コンサート会場はほとんど女性で、男子禁制的な状態でした(笑)。当時は男性で古内東子を聴くって恥ずかしい感じだったのかな。最近は、ほとんど男性ですね。私より少し年上の男性が多いように思います」
デビューした当時はまだ学生だった古内さん。
「高校に行って帰りに予備校にも行ってたんですが、親に嘘をついてソニーミュージックに行ってたりしました。ディレクターの方との制作の交流と大学受験が並行していたんです。そしてデビューと同時に大学生にもなりました。歌手になったという実感がまだ薄いまま、うやむやに学生もやっていました。そのうち札幌でラジオのレギュラーも始まり、怒涛のような日々でした」
実は筆者はその怒涛時代の古内さんにインタビューしていました。たまたま札幌のラジオ番組を東京で録るという日があり、スタジオにお邪魔したのです。それは人気女性誌の取材で、テーマはお菓子。
「ああ、それ、思い出しました。スタジオに入るにもお菓子を並べて、一生懸命気持ちを上げていたんですね。歌手になりたい意志はあったのですが、下積みはなく、最初の5年はもう必死だったという感じです」
シワやシミのない古内さんの美肌を見ていると、とてもそれから30年近く経ったとは思えません。
「20年まではあっという間でした。そこからさらに10年は、そこまであっという間という感じはない。こんなこともあんなこともあったな、と思えます。こうして昔取材してくださった方と出会うと、間接的に時の流れを感じますね」。