四季折々の花を美しくアレンジし、その写真を撮る。そして多く人たちにその手法を教える。この新しい写真の楽しみ方を先駆けたのが「LIVING PHOTO」の今道しげみさんです。CAから専業主婦となって海外で暮らし、出産、子育てをしながら彼女が切り拓いてきた道とは。そしてその集大成としての個展に傾けた情熱を追いました。
LIVING PHOTOの写真を初めて見た人は、アレンジされ、配置された花の美しさとともに、そのテーブルの向こうにある幸せな暮らしを想像するのではないでしょうか。
今道しげみさんがこの教室を始めたのは、2005年のこと。
「料理を作り、花をアレンジして写真を撮る。その教室を始めた当時は、家庭の主婦が一眼レフを持つというのはとても珍しいことでした。写真で自分らしさを表現することで、日々の暮らしをより豊かにしてもらいたい。そんな思いを込めて、レッスンを続けてきました。17年も経ったなんて信じられないですね(笑)。コロナ前は、月に6人を20クラス。120人の生徒さんが、自宅に通ってきていました。その他、中央区の区民カレッジやメーカーのイベントなど、これまでのべ1万人には教えているかもしれないですね」
そもそもCAから専業主婦となった今道さんは、結婚直後の夫の海外赴任と同時にロンドンに滞在。そこで、本場のフラワーアレンジを学んだことがこの道への第一歩でした。
「渡英したのは1988年のことですね。ロンドンのスクールは、自分で花屋さんに行って花を買っていかなくてはいけませんでした。花を買う手間を惜しむ人もいましたが、私は花を選ぶところからとても楽しくて。それで、学校で学んできたことを、今度は自宅で材料費のみで教え始めたのでした」
自宅だから、子連れで来ても大丈夫。彼女のサービス精神はここから発揮されていました。
「ロンドンで出産もしたので、その時の体験をブックレットにして皆さんに読んでもらえるようにしたりもしましたね」
そのサービス精神はどこから、と尋ねると、笑ってこう答えた。
「関西のおばちゃん、だからかな(笑)」
しかし、写真にはおばちゃんテイストは微塵もありません。やがてロンドンから香港へ。その頃、一眼レフのフィルム・カメラ手に入れ、独学で10年、撮り続けたという。
「前後がふんわりボケて、色の綺麗な写真を撮れるようになった頃、ちょうど香港から帰国しました。その年のクリスマスだったかな、夫が一眼レフのデジタル・カメラをプレゼントしてくれました。それがターニング・ポイントになりました。デジタルならフィルム代もいらないし、その場でチェックもできる。これなら教えることもできそうだと確信したんです」
ブログに載せられた写真は大人気になりました。全国から飛行機に乗って習いに来る生徒さんまでが来るようになったのです。
「写真の技術だけではなく、ライフスタイルが美しくなればもっと素敵な1枚になる。料理も掃除ももっと頑張れる。そういうふうに皆さんの暮らしが豊かになればという気持ちがあるんです」。