朝ドラの『ちむどんどん』では、主人公が子ども時代の沖縄の小学校の先生役を、そして大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、権力争いの中で暴言を吐きながらも生き残ったという長沼宗政役として9月3週目から登場する俳優、清水伸さん。驚くほど多くの映画、ドラマで脇を固めながら、ニトリのCMでは一躍主役を演じて人気の清水さんを、舞台『エル・スール』の稽古場に訪ねました。
都内某所。作りかけの舞台のセットが剥き出しに置かれたビルのなかの空間には、まだ芝居の熱気は注ぎ込まれていません。9月21日から東京六本木・俳優座で始まる芝居『エル・スール』の舞台稽古がこれからという朝、清水伸さんとお会いすることができました。
映画やドラマで錚々たる名作の脇を固めてきたキャリアの塊のような清水さんですが、普段の顔は飄々とした爽やかなイメージです。
そんな彼を一躍主役の座に押し上げたのは、あのニトリの「Nウォーム」「Nクール」で演じる普通にいそうな会社員男性の役。
「ニトリのCMで僕を知った人のなかには『お笑いの人かと思った』という人もいるんですよ。街で歩いていてもあまり気づかれないです。あのCMのままにドジでおっちょこちょいだと思われていますが、意外とドラマでは刑事の役とか多いんですよ」
CMは約2秒ほどのコントのオチ的なシーンが3つ現れます。残業している暗い部屋で、部下が先に帰って行ったり。会議でパワーポイントを使い真面目な報告をしているつもりが、自らのどじょうすくいの宴会芸写真を上げてしまったり。… クスッと笑えて、なんとなく憎めない主人公です。
「一番面白い映像を撮らないといけませんから、何十回も微妙なことでリクエストが来るんです。ズボンのお尻が裂けてパンツが見えるシーンで、パンツが見えると同時に振り返る顔も見せないといけないとか。そうすると、結構、きつい姿勢になったりするんです」
過酷な撮影を過酷に見せないのが本当に演技のできる清水さんの凄さ、なのです。