流動的なもののなかに真実を、自然のなかに変わらない美つくしさを。大竹寛子さんは、日本画の技法を取り入れながら、コンテンポラリーアートを表現しているアーティストです。その独特の画風はニューヨーク、パリでも多くの顧客に支持されています。一度見たら忘れられない色と絵肌をたずねてアトリエにおじゃましました。
大竹寛子さんのアトリエは、都内・住宅街の一室。二方向のガラスから陽の差し込む、広々とした明るい部屋です。
描きかけの大きな絵は、和紙を貼ったパネルに大きく植物が描かれています。ブルーが印象的ですが、斜めから見ると紫にも見える、艶やかさと深みのある作品。
「木製パネルに和紙を貼って、その和紙の上に黒箔という箔を貼っています。箔が貼られていない部分は紙の質感を残しています。ブルーは偏光パールという特殊な岩絵具を使い、朝昼晩、光によって色が違って見えるように工夫しました」
この絵はイスラエル人の顧客からの発注があったもの。
「ニューヨークのギャラリーのお客様なのですが、ご自宅に飾られるそうです」
確かに、大竹さんの作品はギャラリーの壁だけではなく、居住空間にあっても輝く作品。どんなゴージャスなお宅に飾られるのかと、幸せな想像をしてしまいます。
2006年に東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業後、博士課程、修士課程を取得。助手としての任期を終え、2015年には文化庁新進芸術家海外派遣制度でニューヨークに1年滞在した大竹さん。
「ニューヨークで展示をさせてもらって、現地のギャラリーと契約をしました。研修期間が終わっても、毎年展示は続けています」
パリでも大竹さんの絵は人気。日本画の技法を生かした彼女の絵は、題材の視点から見ても、いわゆる「日本画」のイメージを超えています。
「日本画の良さは素材感。岩絵具と言う、鉱物を砕いたもの。物質的なものを紙の上に載せていくのです。例えば、ブルーは、半貴石と呼ばれるアズライト、ラピスラズリなどもありとても高価です。昔から、日本でもヨーロッパでも青は憧れの色です」
日本画に惹かれたのには、こんな理由もありました。
「ヨーロッパでは、現代音楽もアートも、中世の歴史を経てミニマムになっていきました。その歴史を勉強していく中で、日本では江戸時代あたりから独自に抽象化されたものも出てきていて、かっこいいなと思ったのです。現代のコンセプチュアル・アートにもつながるような。それはアニミズムや日本人のアイデンティティにも関わっているのかもしれません」。