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    第145回:大竹寛子さん(現代日本画家)

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《2》洋画から日本画、そしてコンセプチュアル・アートへ

 大竹寛子さんが日本画を始めたのは15歳のとき。

「それまではずっと洋画を見たり描いたりしていましたから、ある意味、海外の人が日本画を見るような衝撃がありました。日本では子どもの頃から日本画を学ぶ、というのが難しいですからね」

 そういえば子どものための日本画教室は聞いたことがないかも。大竹さんは10歳から絵画教室に通い始めたそう。

「もの心ついた頃から絵は描いていて。小学生の頃に絵画教室に通わせてもらったのですが、一般の大人に混じって描いていました。ボナールやシャガールが好きで、模写していましたね」

 すでに幼少期から模写しているものがすごいなと驚きます。一方で、絵以外のことも大好きな少女でした。

「父が体育の先生、母が音楽の先生だったので。スポーツはフィギュアスケート、水泳、陸上、バレーボール、テニスといろいろやりました。5歳から中学生まではピアノのレッスンにも通いました。現代音楽のジョン・ケイジさん、武満徹さんの作品に出会ったのも、音楽に興味があったから。そこからイブ・クラインのような抽象画、コンセプチュアル・アートに傾倒していきました」

 ジョン・ケイジはピアノの音色を大事にしながらも『4分33秒』のような前衛的な曲も発表した人。イブ・クラインは、青一色の絵など青にこだわり、自分だけの青「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」を作りだしたアーティストとしても知られています。スタンダードを学び尽くした上にあるコンセプチュアル・アートという点で、大竹さんに共通して響くものがあったのかもしれません。
 こんなエピソードがそれを物語っています。

「風景画で、例えばバルールっていう空気遠近法を勉強したんですね。遠近によって色の出し方も変わっていくというような。ところが、理論ではなく、ヨーロッパの湖に行ったときに、そのままの風景があって、驚きました」

 すべての答えは自然のなかにある。それは今も思うこと。

「ある建築家さんとガウディの話をしていて、その言葉が出てきたんです。『すべての答えは自然のなかにある』。そこに真理があって。私たち人間はそれを模倣したり、違う形で表現し直しているだけだと」。

大竹寛子さん

《3》蝶の変態に真理を見る

 大竹さんが描くモチーフは、自然のなかにあるもの。とりわけ、彼女は蝶が好きです。
 花と蝶がスパイラルに描かれている作品にも思い入れがあります。

「スパイラルの形も、自然の中の無限を表す構造ですよね」

 そして、蝶には深いテーマがあります。

「幼虫から蛹へ、そして成虫に。蝶は完全変態系と呼ばれる生物で、蛹になったとき、なんと1回液化するそうなんです。そうして、成虫のあの美しい形になる。それに感動して『完全変態』という絵を描きました」

 蝶が流動的に変化していく様に、大竹さんは真理を見るのです。

「動的平衡、という言葉が好きです。生命の細胞も、入れ替わって変化し続けていく。そこに真理があると思うのです。それを絵として具現化していきたい」

 蝶にまつわる物語は世界中に、そして歴史的に存在しています。

「ギリシャ語で蝶はプシュケ。プシュケには魂という意味もあります。ギリシャ神話で、プシュケという女性は神様と恋に落ち、神様と人間は結婚できないと戒められます。そして母親にいくつもの難題を与えられ、それを乗り越えて神様と結婚してしまうのです。それは心の成長であり、第2の魂の目覚めの象徴ですね。もう一つ『バタフライ・エフェクト』の話も好きです。ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスでトルネードを起こすという副題がついています。その小さな動が大きな何かへと繋がっていく。それは人と人の出会いも含まれている気がします」。

大竹寛子さん

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