日本でタレントとして活躍していた大久保麻梨子さん。心の赴くままに台湾へと移住し、現地で俳優として活動し始めて11年が経ちます。2014年には台湾のエミー賞と呼ばれる「金鐘奨(きしょうしょう)」で助演女優賞を受賞し、レッドカーペットを歩いた姿は、日本でも話題になりました。その2年後には連続ドラマでヒロインを演じるほどに。
人懐っこく分け隔てない彼女にとって、台湾という国と演じる仕事は、ぴたりとはまっていたようです。
日本でも芸能活動をしていた大久保麻梨子さんが台湾に住むことになったきっかけは、本当にプライベートな旅行からだったようです。
「もともと女優をやりたかったのですが、タレントの仕事が多くてなかなか思うように行かず。これからどうしようと悩んでいました。それで、あるとき、1人旅でふらりと台湾へ行ったのです」空港でも、街中でも、1人の旅行者に「困っていることはないか」と気軽に声をかけてくれる現地の人たち。大久保さんはその人と人との垣根のなさにいきなり心をつかまれたようです。
「街に一目惚れしたというか。国に一目惚れしたというか。たった4泊の旅だったのに、そこから離れるのが嫌で号泣してしまったんです。それは今までにはなかった感情でした」
彼女はこんなにも「ここにいたい」という気持ちになったことはなかったのでした。もともとは、穏やかな性格だと自分でも思っていたのです。
「私は保守的で、思い切って何かに飛び込むことができる性格ではありません。ひとり旅に出るだけでも勇気が必要だった。でも、台湾にいたい、というのは、もういてもたってもいられれないような気持ちだったんです。何か縁があったのかなあ。まずは、台湾で仕事をするというよりも、台湾で生活したい、という強い気持ちが先だったんです」
その半年後には、日本での仕事を片付け、彼女は台湾に住んでいました。
「ビザは芸能の仕事で申請しました。だからその仕事しかできないんです。すごい節約生活をしながら、貯金を使い果たしたら帰らなければと思っていました」
仕事がない時間は、語学の勉強。そんな真面目な大久保さんに周囲の人たちは温かい手を差しのべてくれました。
「台湾の人たちは、出会った挨拶が『ご飯食べた?』だったりします。人と人がご飯を食べるのはとても大事なことなんです。だから知り合った人たちが『家族とご飯を食べるけれど、一緒に来ませんか』と誘ってくださることもありましたね」
その優しさをまた優しさで返すことができる大久保さんは、あっという間に台湾の人たちに愛されていきました。