「清水西谷」(しみずにしや)は、ヴァイオリンの清水泰明さんと、チェロの西谷牧人さんのオリジナル弦楽ユニットです。約10年前、東京交響楽団の首席奏者の2人がオーケストラ以外で音を合わせ始めました。2015年には「清水西谷」という名字を合体したユニット名で本格的にCDデビュー。心に残るそれぞれのオリジナル曲が、世に出ました。昨年の秋に発表された新譜『TRIO』は、ピアノの朝岡さやかさんを招き、より広がりのある世界を叶えた作品に。ソロとしても長きにわたって活躍するお二人に「清水西谷」だからできることを語ってもらいました。
ヴァイオリンの清水泰明さんとチェロの西谷牧人さん。同い年の2人は、背格好が似ていて、音だけでなく演奏する姿がとても美しいのも特徴です。
2人の出会いは、オーケストラの名門、東京交響楽団。
西谷さんはその時のことをこう思い出します。
「僕は東京藝大を卒業後、アメリカで学んだりと時間が経っていて、佐渡裕さんの兵庫芸術文化センター管弦楽団から、東京交響楽団に入団したのは31歳のときだったんです。清水さんは、大学卒業後にすぐ東京交響楽団に入っていて。彼を初めて見たとき、ひときわ雰囲気のある人がいるなと思いました。僕はクラシック以外の曲も好きなので、清水さんが小柳ゆきさんのヒット曲を作曲していたりするのも知って、すごい人だなと」
清水さんも入団してきた西谷さんが気になったそうです。
「自分と似たような体型のチェロ奏者が入ってきたな、と思いました。いや、僕は自分が太れないタイプなんで、気になったのかな(笑)。お互いにオリジナルで曲を書いているし、一緒に演奏すると面白いかもと、恵比寿のカフェでアコースティックのライブをやり始めたんです」
多人数で一つの楽曲を演奏していくオーケストラと違い、お二人にとって、デュオで演奏するのは興味深い試みだったようです。
「オーケストラで弾くのとは、演奏のタイプが違いますね。オーケストラで弾く面白さはもちろんありますが、1対1なので、平たく言うと掛け合い漫才みたいなところがあります。相手の意思を汲み取りつつ、綺麗にハモる場所、丁々発止をやる場所、というような」(西谷)
「2人になると、より自己表現ができます。自由度が高いんです。その場の雰囲気に合わせて、弾くことができる。2人だからできることだと思います。最近は、2人で演奏していると、お互いが自動車と運転手を絶えず交代しているような感じがあります。思ったところに来てくれるな、というような」(清水)
お互いが運転手であり、また車になる。そんなオートマティックな感じを「息が合う」というのでしょうか。
それにしても名字を合体させた「清水西谷」というネーミングは、おしゃれなルックスの2人には少し意外性があります。西谷さんがいきさつを教えてくれました。
「2015年に最初のアルバムを出すとき、会議に会議を重ねて、フランス語とか、いろんなおしゃれな名前が出ていました。でもプロデュースしてくれた作曲家の亀井登志夫さんご夫婦から『清水西谷』はどう、と言われて。それならどちらの名前も覚えてもらえていいかもしれないと、この名前になったんです」。