女性に年齢の話は不要ですが、御歳82歳と聞けば、その美しさは驚くばかり。往年の人気番組『夜のヒットスタジオ』や『料理天国』での名司会ぶりも記憶にビビッドな芳村真理さん。一生美しくあるための習慣の大切さ、香りとエレガンスの関係について話してくださいました。
昭和を代表する歌番組のひとつだった『夜のヒットスタジオ』。司会者だった芳村真理さんは、毎回様々なハイブランドの衣装で登場し、ファッションの流行の最先端を体現してきました。
「2000着以上着たんじゃないかしら。あの時代っていうのは、いろんなことができた時代でしたね。テレビがお茶の間にどっぷり入っていて、視聴者も釘付けでしたからね。何かをやると、反応がものすごかったのです。だから、出演者側もやりがいがあったと思いますよ。先日もテレビ局の人と話していたのですが、あの頃は、テレビが一つの立派なステージだった、と。そこに出るのには、みんな、気構えがあったのです。『大変だ、テレビにちゃんと映らなくちゃ』と。日本中に映ってしまうのだという意識ね。だからみんなおしゃれしてた。今はテレビに出るのも普段の生活の延長みたいな感じで、緊張感がないですね」
影響力が大きかったテレビ。そんな時代だからこその、こんな事件もありました。
「朝のワイド番組『小川宏ショー』に出演していたときのことです。ちょうどツィギーが来日するという頃で、私はテレビで初めてミニスカートを履いたのですね。ミニスカートと言っても、超ミニではないですよ。でもその後、局の電話は鳴りっぱなしになりました。一般の主婦の方たちから『朝から破廉恥な格好でなんですか』というお叱りの電話でした。それでいったん、長いのを履いて、また少しずつ短くしていったの(笑)。そうしたら1年後には、ミニスカートは大流行していました。そのとき電話をした人たちからも『今は私もミニスカートを履いています』という電話がまたかかってきたそうです」
大流行を先駆ける人にはバッシングはつきもの、と芳村さんは言います。
「新しいファッションというのは、最初は『えっ』と思ったり、少し我慢が必要だったりするものなの。当たり障りのないものは大流行はしませんね」
新しいファッションを着尽くし、知り尽くした芳村さんだからこその深い言葉です。
芳村さんと向き合っていて驚くのは、その姿勢の美しさ。背筋がすっと伸びているだけではなく、人に話しかけるときの顔の角度や、座ったときの脚の流し方、手の仕草などすべてが美しいのです。
「私は若い頃からファッション・モデルを2~3年やっていました。あれがよかったですね。どうやったら綺麗に見えるかを徹底的に考えましたから。普段からモデルはみんなシャンとしてますしね。そうすると、それが1年という期間くらいでクセになるのです。皆さん、立っているときは大変かもしれませんが、とりあえず、電車のなかでは膝と膝とくっつけて座りましょうよ。膝と膝がバーンと離れてるのはみっともないですよ。影響力のあるイケメンの役者さんたちに何かの話で言ってもらったらどうかしら。女の子が電車でお化粧してんのはどうかなあ、とか、やっぱり足はきちっと膝をつけてる方がいいよねとかね」
仕草、ポーズの美しさもすべて考えられたものだと言います。
「レストランなどの椅子はちょっと浅くかけて、脚を揃えて流して、相手に対して少し斜めに話しかけるときれいでしょう。私は手の大きさにコンプレックスがあるので、手はなるべく小さく見せるようにしています。脇はしめてね。自分がきれいに見える角度も必ずあるはずなので、友達どうし、スマホで写真を撮りあいっこしたらいいと思いますよ。最初はちょっと疲れるかもしれませんが、姿勢もポーズも、必ず心がけていればクセになりますからね」
肌の手入れ、メイク、ファッション。美しいものを求め続けていくという習慣も、今の芳村さんを形作っています。
「たとえば最近、オイル系の美容液が流行っていると教えてもらったら、その話をおしゃれの情報通の人に聞いてみる。すると、最初に教えてもらったものとはまた違う、もう少しリーズナブルなものも見つかったりします。美しくなれる情報を常に求めるというクセも、私にはありますね(笑)」
ヘアメイクアーティストにきれいな眉を描いてもらったら、ティッシュで眉を押さえてそこに残る色で形を覚え、練習したりすることもあるそうです。