オーストラリア・シドニーに生まれ、16歳のとき、交換留学生として日本へ。その後オーストラリアの大学で健康科学について学び、日本で2004年から8年間、ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして尽力したエリカ・アンギャルさん。彼女は心と身体の両面から美しく輝かせる食とライフスタイルを提案し続けています。香りがメンタルにもたらす良い影響や、日本人が陥りやすい間違ったダイエットなどについて、今すぐ役立つお話を伺いました。
都内の閑静な住宅街にあるエリカ・アンギャルさんのお宅は、広々として心地よい空気に包まれていました。
現れたエリカさんは、春らしいたまご色のワンピース。その日は雨上がりで少し曇っていましたが、彼女が現れたとたん、そこにぱあっと陽の光が差し込むよう。
リビング&ダイニングには、さらに空気を浄化させるようなアロマの香りが漂っています。
「アロマは毎日たいています。今日のエッセンシャルオイルは、ローズマリーとレモングラス。仕事をする場所では、ローズマリーは欠かせませんね。殺菌だけではなく、集中力も高めてくれますから。都心に住んでいると、部屋のなかの空気のほうが汚染されているという研究もあります。新しいカーペットや、建材などからよくない物質も出ます。ルームフレグランスも、ケミカルすぎるものは使いません」
エリカさんは、香りの効能をよくご存知です。
「香りは脳に直結していて、メンタルや感情にも繋がりやすいです。だから、昼間の香りと寝る前の香りは違うものを。寝る前はジャスミンとラベンダーを使います。ジャスミンはオキシトシンという愛のホルモンに働きかけ、ラベンダーはストレス物質のコルチゾールを下げてくれます。フレグランスを習慣にすると、安眠もできます。この香りを嗅ぐと、交感神経のスイッチをオフにすると脳に覚えてもらうのです」
日本人女性は忙しいので、特にそういう儀式的習慣が必要だと、エリカさんは考えています。
「次はこうして、ああしてと、やることに追われて、交感神経のスィッチが入りっぱなしな人が多いでしょう。特にコロナ禍になって、多くの人がリモートワークを始めました。会社は会社へ行けばスィッチが入り、退社するときにはオフになります。でも、家にいると、そういう風にスィッチのオンとオフができづらくなります。だからリモートワークをするときも、この香りを嗅いだら今日の仕事はおしまい、というように、うまく香りを使うといいですね。pose(停止)の時間は必要ですよ」
1970年代に研究された「メディテーション」(瞑想)も、見直されていいのかもしれません。
「アロマの香りに集中する。例えばアイマスクにラベンダーのエッセンシャルオイルをつけ、深呼吸を10分する、というようなメディテーションの習慣をつけるのです。たった8週間のメディテーションの習慣で、情動や記憶を担う脳の扁桃体に変化が起き、不安の感情が減った、という研究報告もあります。前頭葉との繋がりも良くなり、仕事もクリエイティブにできるようになったというのです。10年前は瞑想というと、少しあやしいものと思われたこともありますが、リラクゼーションや深呼吸は、今こそ必要なものですね。テクノロジーの進化は、私たちにアクセルばかり踏ませている。ブレーキも重要なんですよ」
このアクセルばかり踏んでいる人たちのことを、海外ではこう呼んでいるそうです。
「rushing women’s syndrome。急ぎっぱなし症候群。日本人も、海外の先進国の人も。今のままではクレイジー。自分の人生のなかで、バランスを取らないとね。田舎へ行ったり、畑で野菜を育てたり、森林浴をしたり。お寺や神社へ行くのもいいでしょう。松の木の香りは血圧を下げたり、セロトニンが出るとも言われています。マインドフルネスは栄養を取ることと同じくらい重要なことなんです」。