フレグラボの読者にも「ヘアメイク職人_化け子の駆け込み寺」を見た事がある人は多いのでは。YouTubeの登録者数は28万7000人以上(2023年4月10日現在)という人気YouTuber、ヘアメイク職人_化け子さんは、本名・岸順子さん。30年以上、メイクアップアーティストとして名だたる大女優の指名をもらってきたプロフェッショナルです。そのテクニックを一般女性にも使えるようにアドバイスするわかりやすい内容は『化け活。』(主婦の友社)、『化け子の脱オバベBEAUTY BOOK』(扶桑社)という2冊の著書にもなっています。
彼女がYouTubeという新たなジャンルにチャレンジしたのは、54歳のとき。「同世代の女性を美しくする」と決めた覚悟の背景にあったものとは。
美容学校から美容室へ。そして憧れのヘアメイク事務所に22歳で入社。持ち前の探究心とチャレンジ精神からドラマの現場で愛されるアシスタントへ。なんと1年でチーフに昇格した岸順子さんは、順調なヘアメイクアップアーティスト人生を歩み始めました。
結婚、出産。離婚。シングルマザーとなっても、周囲には彼女を指名し、頼りにしてくれる女優さんたちがいました。なかでも、彼女を常にそばに置いたのが、亡くなったNさんでした。
「ずっとNさんの仕事がメインで、空いている時に他の人をメイクするという感じでした。でも、離婚してシングルマザーになってしばらくして、そのNさんの病気も発覚したんです。その頃からですね。この先、どうなるんだろうと考え出したのは。2016年に彼女が他界し、一念発起して『一流の女性のためのヘアメイク』をコンセプトに講座を開きましたが、お客さんは来てくれても、なかなか仕事にはならなかったですね」
芸能界のヘアメイクの仕事には相場があっても、一般の人たちには高すぎる。結局、講座はクローズし、芸能界の仕事だけを続けていた岸さん。その傍ら、起業塾へ通い始めていました。
「ヘアメイクの仕事は、頼まれて、現場を楽しく勤めて1回1回が終わる。ビジネスという観点で仕事をしたことはなかったんです。子どもも育てていかないといけないし、お金は必要です。だから、ビジネスを勉強してみたかった。その時の先生が今の仲間と組んだら、と提案してくれたのです。仲間の一人、井川さんが『インスタをやったら』と言ってくれました。インスタをやっているうちに、YouTubeをやりたいと思うようになりました」
周囲の反応は概ね否定的でした。
「私がYouTubeをやると言うと、ほとんどの人の反応は『いまさら?』でした。なぜかというと、2020年頃のYouTubeの美容チャンネルは綺麗な人がやっていたからです。私は54歳。しかも仕事と子育てに必死で、自分のことを構っていなかった。正直、私、汚かったんです。手をかけなければ、本当に肌はボロボロになるものです。だからこそ、自分を後回しにして頑張ってきた50代の人たちと一緒に変わっていく、というスタンスを取れたんです」
ある程度高齢の大女優を手がけてきた岸さんのヘアメイクのテクニックは、一般女性を美しくするヒントでいっぱいでした。チャンネル登録者数は1年で12万人を超え、商品開発や書籍の話も舞い込むようになったのでした。