昨今、女性の落語家が増えましたが、その先駆けとなった人はほんの数人です。そのうちの1人である柳亭こみちさんは、2017年に真打となり、このほど20周年を迎えられました。「女性も演じやすい」落語を創作したり、日本舞踊の動きを取り入れたり。創意工夫から繰り出される面白さは、華やかで元気で明るさいっぱい。これまで歩いてきた道のりを振り返り、新しい道を担った覚悟を伺いました。
4月18日の国立演芸場は「落語坐 こみち堂12 柳亭こみち独演会」。満席のお客様が芸歴20周年の柳亭こみちさんを、待ち構えました。
こみちさんは、2人の息子、漫才師の夫など、家庭のこともさらりとネタにして枕で笑わせます。「あくび指南」は、彼女の師匠の師匠、柳家小三治さんも得意とした噺。そういった古典落語も、登場人物を女性にするなどして、こみちワールドにしてしまいます。こみちさんが演じる「お師匠さん」の色っぽいこと。
仲入りの前には、ギター漫談のレジェンド、ぺぺ桜井さんとの「ぺぺとこみち」というライブ・パフォーマンスもありました。煌びやかなラインストーンを使ったピンクのロングドレスで現れたこみちさんは、ミニ・ピアノで演奏も披露。ぺぺさんとのデュオはどこか親子のようで微笑ましい限りです。
なんと曲は『チャルダッシュ』。ぺぺさんから提案されたというこの難曲と、2人がどう向き合ったかエピソードも、まるで現代落語のようです。
トリの噺は千葉県にある流山動物園を舞台にした、三遊亭白鳥師匠作の創作落語。豚、チャボ、牛、アフリカ象、パンダ、虎といった動物たちが繰り広げるのは、まるで昭和のヤクザ映画のような世界。こみちさんは、原作ではオスだった動物たちのいくつかをメスに変えながら、男の役も女の役も見事に演じ分けていきます。
それはまるで、彼女のなかの演者魂が雌雄同体なのではないかと思えるほど。
丁々発止の舞台が終わった後、ロビーに降り立ったこみちさんは、声を掛けるお客様一人ひとりに汗まみれの笑顔で挨拶されていました。