ひとりで弾き語りのスタイルを取るときの楽器はギター、ウクレレ、そしてピアノ。
なんと素晴らしいピアノと、運命の出会いをしてしまったそう。
きっかけの一つは、ピアノを置くことのできる関西の実家をリフォームして住み始めたことでした。
「3年前ですね。関西の実家を拠点にしたんです。もともと、生まれ育った場所です。父親が亡くなり、母親が高齢になって施設に入り、もう売ってしまおうかと妹と話していたんですね。それで、帰ってみたら荷物だらけだったけれど、白い壁の感じとかが、僕が暮らしていた広尾のマンションと似ていたんです。妻が亡くなり、東京でひとりでいるより、ここで音楽にどっぷり浸かって暮らしていくのもいいなあと思い始めて。東京はホテル暮らしでもいいかなと。そうこうしているうちに、シンガーとしてやっていくならピアノが必要、という言葉がお告げのように降ってきたんです」
もともと、作曲の仕事で、鍵盤でコードを押さえたりはしていたという亀井さん。しかし、きちんとピアノに向かい合ったことはなかったのでした。
「それまで作曲はギターですることが多かったですね。でも、このコードに行ったら次はこのコードだな、という手ぐせみたいなものが出来てしまうんです。自分で飽きてしまう。作曲家は常に新しいアプローチを求めています。楽器との対話はいつも新鮮さを保ちたいんですよ」
亀井さんは、まずネットでピアノを探し始めました。すると、良さそうなYAMAHAのユーズドが愛知県岡崎市のギャラリーにあることが判明。
「早速、そこへ行きました。すると楽器を万全の態勢にして迎えてくれたのですが、店の人が『まず他のもご覧になられますか』と、奥のVIPルームみたいなところへ案内してくれたんです。そこにはスタインウェイ、ファツィオリ、べーゼンドルファーと、世界の名だたるピアノが並んでいて、その端っこに、カール・ベヒシュタインと書かれたそれはそれは佇まいの美しいピアノがあったんです」
そのピアノと出会った時の動画を見せてもらいました。彫刻されたように美しい譜面台。
「一目惚れでした。考えさせてくれと口では言ってますが、心は即決。キュート過ぎる、とか呻いていましたね(笑)」。