「当たる当たらない」よりも、「どう解釈するか」。星の動きを見ながら、常に思索を重ねてきた占星術研究家の鏡リュウジさん。2020年という200年間の境目を経て、世の中はいよいよ大きな転機を迎えているようです。2024年はどんな年になりそうか、鏡さんの解釈を教えていただきます。
「そもそも、占星術では具体的な事項は予言なんかできないと僕は思っています。コロナ禍だって、誰も言い当てられなかった。いや、確かに20年前に一人だけ、フランス人の占星術研究家が”パンデミック”が起こると言ってはいました。でもそれって世にたくさんある予言の一つなわけで、たまたま、といわれたらそれまででしょう。占星術で予言ができると強く主張するのは僕個人としては否定的です。僕自身、阪神大震災のときに、あとから『やっぱり地震が起こった。言い当てた』というのはやめようね、と。ブログで釘を刺したんですよね。占星術は今起こっている事象を常識とは違う、別な視点から語る視点だと僕は考えています。」
鏡さんはそう言います。でも実は2020年にお会いしたとき「目に見えない小さなものが流行る。薬なんかにも注目が集まるかも。」と雑談でおっしゃっていたのです。
この世は「まさか」な事態が起こるもの。さて、2024年はどんなワードが現れてくるのでしょう。
「風の時代、という言葉がちょっと流行ったでしょう?あれは20年に一度起こる木星と土星の大会合(グレート・コンジャンクション)を重視するアラブの占星術に由来するんです。木星と土星の会合は20年に一度という比較的短いサイクルなんですが、それはおよそ200年、同じエレメントの星座で起こる。過去200年くらいは「地」のエレメントの星座で起こっていたのが2020年からこの大会合が「風」のエレメントへシフトしたんです。占星術的には約200年という単位での時代の転換点でした。地のエレメントは物質や土地を意味しますが、風のエレメントは情報や知識、見えないものを意味するとされていて。そういう大きな時代の転換点にあると占星術では考えることが多いんですよね」
さらに2024年を詳しく見ていただきましょう。
「来年は冥王星が山羊座と水瓶座を行ったり来たりします。この冥王星は2024年の秋以降、終わり頃に水瓶座に入って、10数年、水瓶座にとどまることになります。水瓶座は「風の星座」ですから、この”風の時代“のムードを強調するかんじですね。冥王星というのは物事を根底からひっくり返すんです。2008年に冥王星が山羊座に入ったときにはリーマンショックが起こった。その前回は1995年に射手座に入りました。そのとき、阪神大震災があり、Windows95が発売された。射手座はグローバリゼーションの星でもあります。冥王星の影響は今年も後半から顕著で、大きな組織、企業の解体と再編、スクラップ&ビルドが起こっていますね。山羊座は社会の根本的な構造というか屋台骨を示すのですよね。来年は水瓶座が強調されるから、AIやテクノロジー、水の供給の問題がクローズアップされるでしょう。水瓶座は風の星座ですが、伝統的には潅漑にも関係があるんです。治水ですね。水不足の問題もあるかも」
確かに日本でも世界でも、気候変動で局地的な大雨が降ったり、全く降らない場所があったり。水の供給を巡る問題の火種は既にあります。
鏡さんは、そういう時代にどう生きるべきなのかも考えています。
「そういう時代だからこそ、身近な人間関係、リアルな人間関係を大事にしていかなくてはいけないと思います。また、AIが発達してくるからこそ、人間にしかできないことは何かを考えるべきでしょう。サードプレイスも大事ですね。家庭と職場の往復ではなく、もう一つ居場所を作る。行きつけの店でも趣味のサークルでもいいし、ボランティアでもいいし。ご近所の付き合いも大事ですよ。昔の町内会みたいな(笑)」。