”ホッケーの町”、岩手県岩手町に生まれ育ち、母親もホッケーの日本代表だったという、及川栞さん。2013年に自身も初の日本代表となり、2018年のアジア大会で日本の初優勝に貢献。オランダ1部リーグでの日本初の女子プロホッケー選手としての経験も生かしてチームを率いる彼女の想いは、2024年1月にインドで開催される世界最終予選大会、そして夏のパリオリンピックへと続いています。
ホッケー、というと、アイスホッケーを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、もともとはフィールドでのホッケーが先。19世紀のイギリスで生まれたこの球技の世界的競技人口は約3000万人と言われていますが、日本では約3万人。サッカーに比べれば100分の1です。
しかし、岩手県岩手町はホッケーに力を入れているところ。及川栞さんは、その町に生まれ育ちました。
「母親もホッケーの日本代表ゴールキーパーで、アジア大会で銀メダルをとっています。そして中学のホッケー部の顧問をしていました。父親は器械体操の選手で、同じく中学の器械体操の顧問をしていました。幼い頃の私は器械体操かホッケーか、どちらにするかという感じで、3歳のとき、子供用のスティックを初めて手にしながらも、トランポリンの上で昼寝したり、ホッケー部のベンチで学生に遊んでもらっていました。年齢を重ねるにつれて色々な競技をやってみましたが、自分の身体だけでやるものは苦手で。道具を使う方が好きだった。小4から本格的にホッケーをはじめました」
鍛え上げた筋肉を覆うすらりとしなやかな躯体は、どんなスポーツにも対応しそうに見えますが。
「数年前、ビーチサッカーを体験することがありましたが、ボールを蹴ったつもりが、まだその場にありました。スカしてしまった(笑)」
そんな冗談で笑う及川さんですが、ホッケー用のスティックを手にすれば颯爽とした姿に。使用するボールは、ゴルフボールの硬さに近く、硬式野球のボールとほぼ同じ大きさがあります。
「プレーヤーは脛当てと5本指のグローブのみ。分厚い手袋みたいなものです。脛以外のところに当たると痛いですよ。ゴールキーパーは、顔にも防具をしていますが、母の時代はそれもなかったそうで『今の人は羨ましい』と言っていました。実際、母は鼻を折ったことがあります」
実際にボールを持たせてもらうと、かなりの硬さと重さ。これをスティックで打ち合うのですから、かなり激しい競技です。
「シュートするときの音はカーンと響きますよ!」
爽やかに白い歯を見せる及川さんですが、きっと試合中は鋭い表情なのでしょう。