アスリート一家のなかで、自らを磨いていった及川さん。日本にはプロのチームはなく、企業チームで選手となります。
2011年から「ソニーHC BRAVIA Ladie」に所属していましたが、2016年、期限付きで単身、オランダへ。
「オランダはホッケーの世界ランキング1位の国です。日本は当時のトップ10には入っていませんでした。だから武者修行したくて。向こうで頑張って、東京オリンピックを目指したい。所属チームの企業では休職と復職を繰り返したのですが、2017年1月末退職を決め、その後、2017年の2月からオランダのチームでプロとして活動し始めました。日本人女子としては初めてのプロホッケー選手になったのです」
及川さんはオランダ1部リーグの強豪「HCオラニェ・ロート」の選手となりました。まず驚いたのは、オランダではホッケーが最も愛されているスポーツだということ。
「日本だと、ホッケースティックを持っていると『ラクロスですか』『アイスホッケーですか』と言われます。フィールドホッケーはそれくらい知られていない。でも、オランダだと、スポーツ用品店では店頭にホッケー用品があって、サッカー用品はその奥なんです」
アジアからたった1人やって来ている「及川栞」は「シー」と呼ばれました。
「スティックを一本担いでいるだけで『シー、頑張って!』と、見知らぬ人が声をかけてくれる。嬉しかったですね」
ホッケーに対してあたたかい環境があるオランダ。そのプロのチームで学んだことはとても大きかったようです。
「私はディフェンスなんですが、いかに相手のフォワードが嫌がるポジションを取るか。1つのボールをどうやって取りに行くか。そういうことをオランダで学びました。見えないプレッシャーをかけ合うわけで、最初に大切なものは精神的な強さなんです」
1〜2年目は英語を、3年目はそれに加えてオランダ語も、先生をつけて学んだという及川さん。すべてを積み重ねていく彼女が照準を絞っていたのは、やはり東京オリンピックだったのです。
「2019年に帰国しましたが、企業人としてではなく東京ヴェルディ女子ホッケーチームというクラブに所属しました。そのクラブは世界に羽ばたく選手を育成したいという目的をもっていたからです。そして私は日本代表として東京オリンピックに照準を合わせていました。迷った時の私のモットーは『チャレンジ』なんです」。