亡くなった大橋純子さんを始め、庄野真代さん、日野美歌さん、狩人…と、今ポップスの大御所アーティストたちにサポートで絶大な支持を受けているピアニスト、広田圭美さん。作曲能力に裏付けされた表情豊かで繊細な音色は、パーカッションとのデュオ、227でも発揮されています。そして昨年12月に初めてのソロアルバム『Selfportrait』を発表。2月には227で初のコットンクラブ出演決定。広田さんが一歩ずつ固めてきた道のりは今こそ、真の輝きを発しだしたようです。
2023年12月3日。広田圭美さんの初めてのソロアルバム『Selfportrait』のリリース・コンサートが東京西麻布・霞町音楽堂で開催されました。
お母様の箪笥から見つけたという桜色の艶やかな和服姿で、彼女はピアノの前にいました。
1曲目はアルバムの1曲目でもある『鐘』。冬の空気に冴えるような一音一音が美しく響きます。2曲目は『White Christmas』。そして3曲目は元気な『Happy Birthday』。誰もが知っているあの歌を、独自のアレンジで変奏曲としてゴージャスに弾きます。ジャジーなフレーズもクラシック風な荘厳な和音も、彼女にしか出せない軽快感で疾走して行きます。
まるで、今日、新しく生まれる広田圭美がいる。そんなインパクト。
ゆったりとしたオリジナル曲も、ドラマティックで心がどこか違う場所へ連れて行かれるよう。
これまでのピアニストとしての道のりのなかで、経験した喜びも挫折もすべてが美しいメロデイになっていったのでしょう。満席の観客はうっとりと聴き惚れ、彼女の語る一つずつの解説も噛み締めているようでした。
終盤では、東京藝術大学作曲学部の先輩である坂本龍一さんの『戦場のメリークリスマス』を、彼女のアレンジで。
そして、至近までサポートしていた大橋純子さんの『シルエット・ロマンス』を。
「大橋さんは、あまり女性のピアニストを雇わない人だったそうです。すごくパワフルで、譜面通りに弾かなくてもいいから、アドリブをどんどんやってねと言われました。もっと、もっとと、セッションで化学反応ができる人。私自身、譜面通りに同じことをやっていると眠くなってしまうタイプなので、ご一緒させてもらうのが本当に楽しかったんです。私にとって自由に演奏しつつ、そこでご一緒する方とのバランスをとっていくということを、今、わかってきたのかもしれません」
ソロピアノでも解き放たれた感じが魅力的だった広田さん。
人が自由になるのを聴く。そんな気持ちの良いコンサートでした。