ジャズシンガーとしてデビュー後、80年代に女子大生ブームをつくった「オールナイトフジ」の司会者へ。そして俳優として揺るぎない存在へ。秋本奈緒美さんはデビューして40年以上経っても、そのみずみずしさとさわやかさを保ち続ける人。真面目にひとつひとつの現場と向き合ってきたこれまでと、まだまだ挑戦していきたいこれからについて話していただきました。
さっぱりした気性を伺えるルックスで、男性にも女性にも等しく人気を得てきた秋本奈緒美さん。サスペンスドラマなどでは、疑われやすいけれどその実、ピュアな女性だったというような役どころも。日頃から人思いで、明るい印象の方です。
ジャズ・シンガーとしてビクターレコードからデビューしたのは1982年。
「当時、本名の平沢優美と同姓同名の方がすでにデビューしていらっしゃったので、私は芸名でデビューすることになりました。アルファベットのAから始まる名前がいいな、原稿用紙の枡目いっぱいになる字がいいということで、秋本奈緒美になりました。今見ると、ちょっと暑苦しいかなと思いますが(笑)」
当時はアイドル全盛時代。19歳で身長167センチという彼女は「アイドルでなくてもいいんじゃないか」と言われました。
「私は面白くなかったら笑わないタイプだし、大柄すぎるし、アイドルっぽくなかった。それに当時は阿川泰子さんやマリーンさんら、女性ジャズボーカリストが人気だったんです。それでこのジャンルはありかもということになり、私もフュージョンやプログレっぽいアレンジのジャズ・アルバムでデビューしました。その年に3枚も出しました。ずいぶん、背伸びして歌っていたと思います」
そのうち、存在感のある彼女に俳優の仕事も来るようになりました。
「器用ではないので、歌をやりながら芝居も、というのは無理だなと感じました。それで、25歳のとき、それまで無理だと思っていたお芝居をちゃんとやり始めたんです。それまでの私は、バラエティー班の人だと思っていたし、歌と言っても変形したジャズだし。事務所からたくさんお話をいただいて、演じる世界に飛び込むことを許してもらった。良い時代だったと思います」
しかし、演じる世界は、秋本さんにはまったく未知の世界でした。