アリスのドラマーにしてバンドマスター的役割を果たす矢沢透。シグナルから独立、海外でもギタリストとして活躍する住出勝則。そして堀内孝雄と『南回帰線』を大ヒットさせたこともあるベテラン・シンガー、滝ともはる。around70の3人が、新人バンドとしてタッグを組みます。
その名は『SORISE』(ソライズ)。2011年から数年は『HUKUROH』として緩やかな活動を続けていましたが、今回はプロとして本気の再デビューだと気合が入ります。
6月23日、渋谷・pleasure pleasureでの始動ライブ(チケットは完売)に向け、オリジナル曲を制作中の御三方を訪ねました。
ベンチャーズに憧れ、寺内タケシを見てエレキを手にしたという、住出勝則さん。
「シグナルでデビューして、今年で49年。高校生の頃はGAROにも影響を受けたし、ハードロック、フォーク、歌謡曲、R&B、ファンク…なんでも好きだし、なんでもOKかなあ。だって、あの音楽は良くてあの音楽はダメなんて、なんで言える?」
しかし、住出さん自身もそう言えるようになったのは今だからこそ。
「ライバルに『君の音楽は』と問われて、うまく説明できなかったことがありました。今は、素直に言えます。結局は、好みの問題。音楽は十人十色、なんですよ」
そう言い切れるようになったのには、谷村新司、武田鉄矢らのサポートメンバーをした後、1996年、ソロギタリストとして海外へ出て行った経験も裏付けされています。
「当時住んでいたオーストラリアで、ギター1本というのは簡単なことじゃなかったですね。2年近くは1日も休まず、10時間は練習しました。何かに取り憑かれたように弾きました。40歳でしたからね。それまで弾いていなかったジャズやボサノヴァも一生懸命聴いてコピーして」
最初はバーのようなところで演奏するしかなかったそうです。
「メルボルンのバーでは、ライヴチャージ300円くらいからやりました。ところが、それがビールの値段を超えるくらいになってくると、途端に厳しくなりましたね。どんな凄いヤツがやってるんだと(笑)」
それでも一つずつ海外での実績を重ね、Tuck&Pattiのタック・アンドレス氏にも評価されるほどに2001年には全米でベストアルバムもリリース、好評を得ました。
そんな住出さんが、2011年に、滝ともはるさん、矢沢透さんとHUKUROHを結成したのは「ソロが長かったのでバンドでやるのも楽しいかな」という気持ちでした。
「長い長い付き合いだしね。HUKUROHはストレスなく、楽しいことをやろうという気持ちだった。でも今回は、ちょっと違うんです」
よりオリジナルなサウンドを目指して。バンド名もSORISEに変わりました。
「これまで3人が培ってきた叡智を出し合って、1+1+1=6にしたいんですよ。ひとりひとりが培ってきた感覚をさらけ出しあいたい。でも、技術に走り過ぎないで、オーディエンスもみんなで一緒に歌える、というところを大事にしたいと思っています」
圧倒的に多ジャンルを、真剣に聴いて演奏してきた3人のサウンドは「年齢相応に古い」ものにはならないはず。
「New Oldなんていう言葉もあるらしいね。でも、自分たちが通ってきたレトロには、日本人のもっているアイデンティティーがあると思うんです。それを昔あったものそのままにはせずに、アレンジは今風にかっこよく。ダサくないけど、胸に届くシンプルさもある。そんなオリジナルを、今3人で作っているんですよ」
HUKUROHのとき以上に元気な笑顔の住出さん。コアなギターファンにも、おそらく彼の一音一音が響くことでしょう。