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    第214回:武内陶子さん(フリーアナウンサー、パーソナリティー)

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《2》悩みがないのが悩みだった。でも一個ずつ、悩みが増えた

 NHKに入ったばかりの頃は「悩みがないのが悩み」だったそうです。

「ジャーナリズムの仕事を始めて、一番困ったのは、私は悩みがないのが悩みだったんです。
私は全部受け止めちゃうし、全部楽しくて、世の中の怒りを探しづらいんです。そういう人は報道には向いていない。これは長女気質だったのかな。ところが人生が積んできて、転勤、結婚、別居婚、出産…と乗り越えるものが増えてきたときに、やっといろいろと疑問が出てきました。働く女性として、働く母として許せないとか」

 ひとつずつ、最善を考え、逃げずに対処してきた武内さん。
「いっぱい悩みができました。たとえば子育てのことひとつとっても、子どもが学校に行きたくないと言い出したりね。『ママ、学校大好きだったよ』と言ったところで、子どもは別人格なんですから。学校行きたくない気持ちがわからない。そうやって一個ずつ、悩みが増えて。朝、学校へ子どもを送りたいから仕事を断るとか。出産するかどうかから、女性はいつも選択して決断しての繰り返し。その度に後悔することもあり、失敗もあり。でも紆余曲折しながら、一本道じゃない複雑な道を歩いていくという感じですよね」

 そうやって悩みを悩み抜いて選び、決断して。失敗はまた次に生かして。その繰り返しが今の武内さんのおおらかさと自信をつくっているのでしょう。

「自分で経験したこと以外は自信をもって言えない。その人から聞いた話以外は、全部噂ですよね。私にとっては自分が本当にその人から得たもの、そして自分が経験したことしか喋れない」

 それを面倒な性格、だとも苦笑いします。

「たとえば料理番組だと、食材は絶対に前もって1回は触っておきたい。知りすぎるとわかった気になっちゃって面白くない場合もあるんですけど、私は全部知って、自分の中に通して、もう一回最初の気持ちに戻って伝える、というやり方なんです。その方が、何がポイントか、大事なことを伝えられると思うんです。そこを取捨選択して伝えたことは、誰かの心の中に引っ掛かることがある。つまり、100あった中から1しか伝えられない。でもその無意識の99の中にある情報はものすごく大切なんです。その99を大切にした上で伝える1、なんですよ」

 武内さんのすごいところは、その100の中から一旦自分というフィルターを通して出してくる1が、実に素早くて的確だというところです。

「だからね、そういうふうな仕組みで伝えてはいるけれど、普通に毎日、全力で生活しているだけだということなんですよ」。

武内陶子さん

《3》降りたての雨の香りは、食べたくなる!?

 普通に生きるのもフル回転の武内さんですから、香りもとても敏感です。

「私はすごく鼻がいいんですよ。だから、香りが辛いこともある。髪の毛に強すぎる香りの整髪料をつけられたりすると、その香りで1日酔ってしまうこともあります」

 彼女が愛するのは自然な香り。

「一番、本当に好きなのは、雨が降りたてのときの香り。土でもアスファルトでも、口の中に味がするくらいの雨の香りを感じますよね。夏の夕立のときの、降り始めたときの香り。もうあの香りは食べたくなりますよ(笑)」

 故郷には霧の香りも。
「私の故郷は、すごく霧が降るところなんです。霧ってびしょびしょに濡れるんですよ。その霧の香りもいいです」

 香りを「食べたくなる」と表現したのは、コロナで一度嗅覚を無くしたことがあったから。

「コロナになったときに、しばらく味がなくなり、香りがなくなったんです。それはもう、本当に味気ないと思いました。ところが、味がわからなくても、野菜と果物だけはなんか美味しいんです。そのことにはびっくりしました。加工されたものは全く美味しくないのに。鰻とか、普段は美味しいのに、べろべろ脂っこい気持ち悪いものになっちゃった。コーヒーもアロマを全く感じないので、気持ち悪い水になっていましたね(笑)」

 それでも子どもたちのために料理を作り続けていたという武内さん。それもちゃんと美味しく作れていたそうです。

武内陶子さん

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