7月26日から東京、神奈川、名古屋、京都、大阪を皮切りに全国公開される映画『DitO』。松田優作賞受賞作品『オボの声』でボクサーの主人公を演じた結城貴史さんが、再び、40歳を超えてボクサーとして生まれ変わろうとする男を演じます。しかもこれが初監督作品。家族の再生と、居場所とはを問いかける物語の舞台は、原色の街、フィリピン。2018年のスペシャルインタビューで語った夢を誇らしい現実にするまでのいきさつは、まさに映画のテーマと重なります。
公開に先立って行われた完成披露試写会では、何人かのプロボクサーたちも集まっていました。舞台挨拶に立った監督で主演の結城貴史さん、尾野真千子さん、田辺桃子さんは、満面の笑顔。
「DitOという言葉は、タガログ語で”ここ”という意味。主人公の神山英次は、まさにここで再起をかけているボクサーなんです」
結城さんは、撮影が終わって、ちょっとふっくらした顔で語っていました。神山英次役では、今よりも15キロ以上減量していたそう。
彼を追いかけて一人でフィリピンにやってくる娘役に田辺桃子さん。妻の役に尾野真千子さん。
「二人とも昔から知っていて、田辺桃子さんは子役の時代から知っているし、尾野さんも20年来の友達」
そこで尾野真千子さんから「結城くんには池に落とされた思い出がある」といったエピソードが飛び出し、翌日のスポーツ新聞の見出しになっていました。
「あの話がまんまと一人歩きしましたけど(笑)。尾野さんとは、20年以上前に、あるCMのオーディションで一緒になったんです。最初に東京に集められて、そこで合格した人が最終審査を大阪でやるというので、みんなで新幹線に乗って行きました。その時、結構仲良くなって」
しかし、友達として仲が良すぎて、一緒に仕事をすることはなかなかなかったのだそう。
「ここぞというときに、お願いしようと。今回初めての監督作品で、勝負を賭けているので、彼女は大河ドラマに出ていたんだけれど、4日間だけもらって、フィリピンに来てもらって撮りました。常夏の国だと思っていたみたいなんですが、実際に撮影したのはフィリピンの北のバギオという避暑地だったので、夜はダウンが必要なくらい寒いんです。空港から車で5〜6時間かかりますし。尾野さんは半袖しか持ってきていなくて、フィリピンの暑さを知らないまま、帰国しました。彼女の芝居がすごく好きで、もっとがっつり一緒に演じたかったですが、ポイントで彼女の演技が生きるように撮ろうと決めていました」
なるほど長年の付き合いがあってこその、離れても情の繋がっている夫婦役がぴたりときています。。
一方、娘役の田辺桃子さんのことも、子役時代から知っていた結城さん。舞台挨拶では「初めて会ったとき可愛かった」と言うと「今はどうなんですか」と突っ込まれていましたが。
「今でも娘のように可愛いし、ただ、それでは距離が近づきすぎちゃうので、現場中はホテルも全部別にして、僕は近づかず、演出する時だけ話すようにしていました。だから、最初はずっとフィリピンに行って帰ってこない父親に不信感を抱くように、桃子は僕にリアルに不信感を抱いたかもしれませんね(苦笑)」
劇中の役名も桃子。母親が亡くなり、父親のいるフィリピンにやってきた桃子は、少しずつ逞しく成長してゆきます。