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今かぐわしき人々 第223回
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    第223回:若村麻由美さん(俳優)

    更新日:2024.9.24

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香りは人のいろんな感情を刺激しますよね。
そこはすごく演劇的だと思う。

 演じる人物の幅広さ、歳を重ねてさらに美しい存在感。若村麻由美さんは「本物の役者」の風情をもつ人。そんな彼女が2011年から古典の中の人物を演じる『若村麻由美の劇世界』 が、今年も11月22〜24日、東京・南青山の銕仙会館能楽研修所で開催されます。今年の演目は『「あこがれいづる」源氏物語より』平安の雅に生まれた世界最古の長編小説『源氏物語』の「憧れいづる魂-六条御息所」と「光添へたる夕顔の花-光源氏」を、演出家・笠井賢一氏が語り芝居として書き下ろす稀有な物語。若村さんの魅力がスパークしそうです。

《1》自分のなかの演劇の体幹が鍛えられるような感じがする

 朝ドラ『はっさい先生』のヒロインとしてデビューした若村麻由美さんは、その後、現代劇から時代劇、舞台、映画、テレビドラマ、CMと八面六臂の活躍を続けてきました。
 しかし、来た仕事をうけるだけにとどまらず、ご自身でプロデュースされているのが『若村麻由美の劇世界』という舞台公演です。

『若村麻由美の劇世界』は、2011年から自主公演として始めました。日頃はあまり演じることのない『古典』に踏み込んだんです。そのきっかけになった仕事が、「原典・平家物語を聴く会」が99章段をDVDで次の世代に残すという企画でした。中村吉右衛門さんに始まり島田正吾さんで終わるという豪華な企画で、そのなかに私のような現代劇の役者がいたり、舞踊家、能楽師、歌舞伎役者というさまざまなジャンルの語り手がいるというものでした。邦楽の演奏で語られたり、舞踊で表現されてもいたり。そこで、私は『小宰相身投』という章段を語らせていただいたんです。それが古典作品との出会いでした。

 古典を、しかも原典のまま語る。第1回『若村麻由美の劇世界』は『小宰相身投』と『木曽最期』で、今回と同じ、東京・南青山の銕仙会能楽研修所で開催されました。

「第1回にそれを選んだのは、まず『平家物語』の深さに感じ入ったからですね。生と死の物語で、諸行無常という大きなテーマが描かれているということ。そして戦記ものですから男性の物語だと思っていたのですが、そこにいる女性たちの生き方がとてもドラマティックで。現代の女性も十分共感できる部分があるのです」

 若村さんは読み深めるうちに、そこにたくさんの気づきを深めていったようです。

「繰り返し挑戦することによって、いろんなお話の深みを感じられました。それともう一つ、『平家物語』には文章の響きの美しさがあります。もともとは琵琶法師が辻々で語っていたものですから、文章が音楽的なんです。私は琵琶で語るわけではないけれど、読み上げるだけで日本語が美しい音楽のように広がる。お客様からも『その響きの美しさに陶酔する』というような感想をいただきました」

 物語の中には男性も女性も存在します。若村さんはそのどちらも演じられる魅力も感じています。

「特に男性の役をやるのは勉強になります。『木曽最期』は木曽義仲の最期を語りで演じるのですが『一千と二千の騎馬を』と太い声で語ると、その軍勢のなかに立っているような気持ちになるんです。そういう男性を演じると、自分のなかの演劇の体幹が鍛えられるような感じがします。これはもうライフワークと言えるのかもしれませんね。続けていこうとは思っています」。

 コロナ禍でも、この『若村麻由美の劇世界』を、観客数の制限を受けながらも、大事に続けてきました。

「2020年12月に、配信もやる形で『原文・曽根崎心中』をやらせてもらいました。これは近松門左衛門が人形浄瑠璃のために書いたものです。その後、歌舞伎にもなっていますが、冒頭『観音巡り』は省略されているので、私は近松の書いた全てを語ってみたかったんです」

 ライフワークにしよう、と決めたわけではなく、続けていくうちにそう言えるものになってきた。若村さんの表情から、そんな静かな確信と、回を重ねてきた充実感が伝わってきます。

若村麻由美さん

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