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今かぐわしき人々 第225回
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    第225回:きじまりゅうたさん(料理研究家)

    更新日:2024.10.3

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香りこそが、
料理のリアリティを一気につくるんです。

 NHK『きょうの料理』はもちろん、不定期放送の『きじまりゅうたの小腹がすきました!』で一躍人気者になったきじまりゅうたさん。ありものでもささっと本格的に美味しいものをつくる安定した腕と明るいキャラが印象的です。親子三代の料理家という環境に育まれた彼の料理と巧みな手順は、今、YouTubeなどの配信でも「目から鱗」と、注目を集めています。

《1》子どもの頃から祖母の手仕事の手伝いを

 祖母は家庭料理を教える料理研究家の先駆けとなった村上昭子、母はその流れを正統に受け継いだ杵島直美。つまり、きじまりゅうたさんは3代目の料理研究家です。
 今回は、きじまさんが子どもの頃、そのおばあさまと杵島一家が同居していたという家のキッチンスタジオで取材させていただきました。
 中庭を臨める広々としたリビングダイニングは、壁片面が大きな収納になっていて、さまざまな鍋や梅干し、果実酒などが並んでいます。そこへと続く細長い台所は昭和の風情。たくさんの雪平鍋や銀色のお玉が、きれいに磨き込まれて出番を待っているのです。
 ここで、物心ついたときから、きじまさんは祖母の手伝いをしてきたそうです。

「手伝うのは嫌いじゃなかったですね。小学校の3年生ぐらいまでは当たり前のようにやっていました。ただそれ以上大きくなると、部活を始めたり、やがて夜遊びをするようになったりして、だんだん家にいなくなりました。今思うといい思い出だし、あれは経験できてよかったと思うんですけどね。例えば、干したりするの、今でも全然やっちゃうし」

 干す、という調理法はなかなか都会では難しそうですが、おばあさまはしょっちゅう何かを干していたそう。

「まず毎年、祖母はたくあんを漬けていました。冬になると、細めの大根を買ってきて、葉っぱのところを2本束ねて、洗濯物の物干し竿にかけていくんです。逆V字に垂れ下がるでしょう。どんどん並べていって、ある程度しなっとしてきてから、糠と塩とざらめ、柿の皮、みかんの皮なんかを一緒に木樽に入れて漬けていくんです。それを庭の軒下に並べる。最初の漬け始めは、大根やみかんの皮の香り、新しい糠の香りが混じっていい香りなんですが、だんだん発酵が始まると、キョーレツな匂いに変わるんですよ(笑)。小学校の頃、家の近くの角を曲がると『ああ、帰りたくない』と思ったくらいです。ご近所に申し訳なかったな。でもみんなそんなことをやっていたんですよね。それと、祖母はそうやってつくったものを人にあげるのが好きだった」

 そうしてずっと手がけられていた経験とノウハウが、人に教えるもとにもなっていったのでしょう。お裾分けをする感覚で手仕事レシピが出来上がっていったのかもしれません。

「手仕事は季節ごとに自然にやっていました。冬時期は保存食が多かった。ゆべし、というのもあって、柚子の果肉だけをくり抜いて、味噌とか入れてからっからになるまで干すんですよ。それをスライスして、食べる。和菓子でも柚餅子(ゆべし)ってありますけど、うちの祖母のは味噌のゆべしで、味噌と胡桃なんかを入れて、また切り取った柚子で蓋をして、さらしかなんかで包んで、逆てるてる坊主みたいに吊るして干していくんです。乾いたのを薄く切って酒のつまみにするようなものだから、子どもの頃は全然美味しいとは思わなかったんですけどね」

 薄く切った大根に柚子の千切りを乗せて巻いたものも、よく干してあったとか。それは柚子のいい香りがしそうです。

「それは甘酢で漬けるんですけど、一番美味しかったですね。そういうのも、吊ってある紐ごとハイ、って人にあげちゃう。そういう祖母を見ながら、子どもの頃から料理についてのいろんなことを無意識に学んでいったのかもしれませんね」。

きじまりゅうたさん

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