大病を乗り越え、リハビリをして、昨年からはコンサートも再開した堀ちえみさん。11月22日に出版される夫の尼子勝紀さんとの共著『人生の悩みをシンプルにする50の言葉』(主婦と生活社)には、今ある幸せにひとつずつ歩まれてきた夫婦の軌跡と笑顔が詰まっています。
黒目がちにきらきら輝く瞳と優しい笑顔で現れた堀ちえみさん。
ホリプロタレントスカウトキャラバンの第6回で優勝した後、歌手として1982年にデビューしました。同期には小泉今日子さんや中森明菜さんがいるアイドル全盛のとき。「花の82年組」と呼ばれた年です。
「花の82年組、とおっしゃっていただけるのは、まず私たちの先輩にもうすでにすごい方々がいたので。まず、松田聖子さんですよね。その方々を追いつき追い越せという感じだったんです。タッグを組んで、みんなで立ち向かっていくという感じがありました。バブル前の日本の経済がすごく動いていた時期でしたし、忙しかったのは、媒体も多かったですし、イベントも多かったですね」
バラエティ番組にアイドル歌手たちも出演して、ちょっとしたコントも。
「そう!確かにいろんなことをしていましたね。マルチタレント、という言葉が流行ったぐらい、いろんなことができないといけなかった。しかもあらかじめ学習するわけではなく、現場に行って学べ、みたいな無茶なところがありました(苦笑)。職人さんの世界でも当時はそうだったと思うのですが、先輩や師匠の背中を見て学べ、みたいなね。頭で考えるな、とか。体で覚えろ、的な」
彼女の主演で人気を博したドラマ『スチュワーデス物語』も、なかなか大変な撮影だったようです。
「あのドラマは主人公がスチュワーデスとしての訓練を受ける話ですから、実際に航空会社の監修が入っていました。だから、本当にCAさんになるための課程と同じ指導があって、ちゃんとやらないといけなかったんです。少しでも誇張や間違いがあってはいけない。本当に教官の方がチェックされるので、撮影がなかなか進まないんですよ。だから『のろまなカメ』とか言ってましたけど、本当に大汗をかいていたかもしれません。いや、汗をかかないと終わらないというか(笑)」
ドラマの撮影。バラエティ番組やたくさんの歌番組。イベント。レコーディング。当時の歌手は本当に忙しかったのでしょう。
でも今のちえみさんは、そんなことを微笑んで振り返ります。
「あのときに培った根性というか。自分に根付いているものはあると思いますね。人間って、一生懸命さの加減が難しい。頑張りすぎてもいけないし。人生は一回きりだから、一生懸命生きないといけないけど、頑張りすぎちゃうタイプだったのかもしれません」。