3年ぶりにシングル『BETWEEN SLEEP AND AWAKE』とライブアルバムをリリースする堂珍嘉邦さん。大阪のエレクトロミュージックアーティスト、speedomaster.とのコラボレーションとなった今回の新曲から、今歌について思うことなどを語っていただきました。
2023年のバースデーワンマンライブで初めて披露された『BETWEEN SLEEP AND AWAKE』は、ライブではストリングスアレンジで素敵な曲でしたが、音源はクラブシーンでかかっても違和感のないようなアレンジになっています。
歌詞も読み込むほどに解釈が広がるミステリアスさ。一般的にあまり使われない言葉も出てきます。たとえば「いまどきの奇特」とか「じゃれあいの徒心」とか。堂珍嘉邦さんはこの曲をどう解釈してゆき、どう表現しているのでしょう。
「そうですね。奇特、っていう歌詞は最初、あれ、聞き間違いかな? 『既読』に聴こえたような(笑)。作り手が曲を生みだす段階にはいろんなことがあったのだと思いますが、歌い手側としては、そこから離れて言葉が訴えてくるものを感じて表現しました。たとえば、誰も気持ちをわかってくれてない、一人になりたい、というような心境の断片をつなぎ合わせて。そういう押し潰されそうになっている自分の心を守る気持ち。切迫感。戸惑い。そういうときって、誰にでも瞬間的にあるんじゃないかな。ずっとそういう感じをもっている人もいると思うし。そういう意味で、この曲そのものはとてもポップな曲だと思います」
メロディーの印象的な反復。言葉の韻。そういうものが折り重なっていきます。
「そういう意味では、ちょっとクセのある曲かもしれませんね。僕が発信してきた曲のなかでは新しいサウンド。新しいサウンドというのは、流行のという意味ではなくてね。聴く人にいろんなふうにとってもらっていいんだと思いますし。昼と夜と明け方の隙、という歌詞があるんですが、目を閉じるのと目を開ける一瞬の隙、というふうにも取れたり」
堂珍さんのソロ・アーティストとしてのキャリアはもう2012年からですから、もう12年。オーケストラとの共演や、プラネタリウムでのコンサート、ミュージカルコンサートなど、さまざまなアプローチを重ね、たくさんの持ち歌があります。ずっとうたっている歌もあれば、そうではない歌もある。そこにはどんな理由があるのでしょうか。
「その歌にどこまで自分で寄り添うか、ということだと思うんですよね。ずっと歌える楽曲はやはり大事にしてますね。ちょっと恥ずかしいと思うワードだったり、テーマがちょっと今じゃないな、と思ったりしたら、ぎこちなく感じてしまう。それは分かりやすく言うと、洋服と一緒なんです。ワードローブのなかで、昔のでも着られるなという服はヘビーローテーションになるわけじゃないですか。歌詞の中の潜在的なテーマだったり、トータル的なことなんですけど」
なるほど、歌詞のテーマとなっていること、表現されているワードがしっくりと自分の心境にはまるかどうかということなのでしょう。
「今の自分の心境に近い、ということは一番大事かな。今回の『BETWEEN SLEEP AND AWAKE』そこだったのかなと思います、歌メロ確認用の仮の歌詞がそのままでいいやと思えるくらい」。