どこかクールだけれど、その底にあたたかいものがいつも流れている。堂珍さんの歌声は表現の可能性が大きい安定した声です。
「自分以外の人が僕の声にどういうイメージをもっているのか、まったくわからないですね。自分はここまでできるとかということの幅も。ここまではOKという範囲も。ただ、意外にそこを外していく変化球が心地よかったりするパターンもあります」
舞台俳優としてもミュージカル『RENT』、『アナスタシア』、『ジャック・ザ・リッパー』など、さまざまな役柄を演じ、ソロアーティスト、CHEMISTRYとしても歌ってもいる堂珍さん。そのひとつひとつの体験も、歌う言葉の表現力につながっているのではないでしょうか。
「ただ、舞台のときは、言葉がダイレクトでしょう。その心境がそのまま言葉になっているパターンが多いから、詩的な表現は逆に少ない。舞台の歌は、状況説明的、心理説明的な歌詞が多いんです。それを観客に分かりやすく伝わるようにするのが第一だから。自分自身がイチお客さんとして観に行った時に、音響的に聴こえないのは論外だけど、セリフや歌詞が何を言ってるかわからないと、僕、寝ちゃってたりするんで(笑)。最終的に俳優のアプローチによる匙加減で決まるような台本もありますしね。…とは言いつつ、僕はまだ本当にいろんなミュージカルがあるなかの一部にしか出てないですから、偉そうなことは言いませんが」
でも伝えることの本質は同じ。
「言葉を体と声で伝えるということに関しては、ミュージカル俳優もシンガーもフィールドは同じなんですよね。その本質にどうアプローチしているのか。そこはいろんな俳優を見て、この人のどこがいいんだろう、この人のどこにお客さんは惹かれるんだろう。この作品のどういうところが心をつかむんだろうと、いつも考えて観ていますね」。